一時は3%に達していた物価上昇率も直近では2%台となってきました。10月からは新最低賃金が全国各地で適用され始め、全国平均の最低賃金は1121円となる予定です。対ドルの円相場は150円を超えています。これらの諸要因から会社経営に係るコストは確実に上昇していくことは間違いありません。
会社経営はコスト抑制だけではなく、売上増加も考慮しなければなりません。売上高を単純化すると売れ数と単価の掛け算です。両者が共に上昇するのが好ましいのですが、実質賃金が低下し生活費の上昇が追い打ちをかけている現状では、売れ数が伸びることは期待できません。一方の単価引上げも厳しいというのが実情でしょう。
しかし販売単価を上げる努力をしない経営者は真の経営者とは言えません。販売価格の設定は経営者の最大の責務と言っても過言ではありません。デフレ時代であれば、販売価格は現状でも実質的なコストは下振れするので、実質的な利益は増えていました。しかしインフレが常態化した現在、販売価格を引き上げないとコスト上昇により、利益は確実に下降していくのです。
どの位の価格引上げが妥当なのか。とても悩ましいものです。考え方の1つとして価格の需要弾力性があります。価格を増減させたときの販売数の減増の対照を診るのです。価格を引上げても販売数が大きく変動しないのであれば、価格の弾力性は小さいと言えます。このような製品であれば価格引上げ率は高くても良いでしょう。逆のパターンでれあれば、引上げ率を低くしないと販売数が大きく減少してしまいます。
価格決定のもう一つの要因は業界における自社の地位です。断トツNo1であれば、価格を引き上げても他社に需要が流れる可能性は低いでしょう。その逆に業界地位が低い3番手以下であれば、No1やNo2の引上げ率より高くしてしまうと一挙に客が他者に流れてしまう可能性が高くなります。よって価格引上げ率を強者に合わせるか又はそれ以下の引上げ率としてしまいます。
いずれにしても価格設定は経営者の最大の責務であることを忘れてはなりません。そしてまた、引上げは順風が吹き始めたなと判断したら即座に行うべきです。価格引上げが遅きに失したときは、それまでに失った利益減少を挽回することは極めて困難になってくるからです。