誰しも病気にはなりたくないもの。しかし病は突然と襲ってきます。日本では昭和36年に全国民が何らかの健康保険制度に加入する皆保険制度が確立しました。医療を受けたときの自腹を3割までにし、残り7割は公的な健康保険制度で費用を賄うのです。全世界に誇るべき健康保険制度です。
健康保険制度は当然ながら、収入と支出とで均衡が取れていないといけません。収入≧支出が制度を維持する為の最低ラインと言えるでしょう。短期的に収入≦支出となっても積立金があれば数年は制度を維持できるかもしれません。しかしこの状態が長く続けばやがて制度は破綻します。
大企業の社員らが加入する健康保険組合が危機に陥っています。組合数は全国で約1400あるようですが、2024年度はその半数が赤字であったといいます。平均の保険料率は9.31%で前年度より0.04%UPしました。なお、中小零細企業の社員らが加入する協会けんぽの全国平均の保険料率は10.00%です。ちなみに大分県は10.25%となっています。
この保険料率10.00%は健康保険組合が解散するか維持するかの判断基準となります。仮に健康保険組合を解散した時は、その組合員は協会けんぽの被保険者として加入することになります。よって協会けんぽの保険料率が解散するか否かの判断の分水嶺となるのです。
この10.00%を超えた健康保険組合が334組合あったそうです。実に約1/4の組合が解散水準に到達しているのです。問題は何故こんな状況に追い込まれているかです。国全体でみると私達国民は健康保険制度を維持できるかの厳しい判断を迫られていると言えます。その問題の1つは後期高齢者医療制度です。後期高齢者医療制度に係る費用の1割は当時である高齢者、国の負担が5割、残り4割が現役世代からの支援です。この4割には協会けんぽ以外に健康保険組合も貢献しているのです。
健康保険組合が解散せずに維持できるかの試金石は、後期高齢者医療制度への送金額を減らすことが効果的です。こうした主張をすると高齢者いじめと取られかねません。しかし皆の苦悩を現役世代だけに押し付けることは限界です。当事者たる後期高齢者にも応分な費用負担をしてもらう必要があるでしょう。今のままでは、賃金が上がっても社会保険料(健康保険料)の増加で、実質賃金の伸びがプラスに転換する月数がより先送りされることなってしまいます。大局的な見地からの英断を求められていると言っても過言ではないでしょう。