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労働分配率が低水準に、一方でドイツの最低時給は2500円へ

 今年度の最低賃金の議論が始まりました。労働者側は早々の全国平均1500円達成を主張し、経営者側は賃金UPをコスト増と結びつけて、1500円到達は止む無しとしても到達までの期間を長くしていきたいという気持ちが強いようです。公益委員はどのように考えて結論を導いていくのでしょうか。

 と前置きはこの位にして、17日と18日の日本経済新聞朝刊に2日連続して興味深い記事が掲載されていました。見出しだけをあげてみます。17日の記事はこうです。【利益増でも賃金に回らず】【労働分配率、昨年度51年ぶりの低水準】【賃上げの好循環道半ば】。18日の記事はこうです。【ドイツ、最低時給2500円へ】【減税・賃上げで景気浮揚】。

 私はこの記事をみて感じました。「日本の賃金は本当に低い。儲かっている企業は利益配分の仕方を再考すべきだ。利益の多くを株主配当の増加(と自社株買い)や内部留保に回すのではなく、社員の賃金水準UPに使うべきだ」と。利益の多くを賃金に回すことで購買力が高まります。市場が拡大します。拡大した市場の効果により企業は製品・役務の販売額が増え、間接的に増収増益を実現できる可能性が高まります。

 経済学者は勿論のこと、政府・霞が関・政党指導者はこのような論理で賃金引上げを主張しないのでしょうか。感情論ではダメです。論理的に物事を考えないといけません。企業は内部留保を積み増しても将来の増収増益にはつながらないことを理解しなければなりません。内部留保ではなく設備投資、研究開発投資を積極的に行うべきです。研究開発投資や新製品開発を疎かにした為に企業力の著しい低下を招いている日産自動車をみれば一目瞭然です。

 日本の最低賃金はOECD加盟国の中でも下位です。韓国には既に追い越されてしまいました。ドイツの時給2500円を最低賃金とみなせば、ドイツの最低賃金は日本の2倍強です。それでいて強い輸出競争力を維持しています。勿論EU圏の単一通貨であるユーロの恩恵を受けていることも事実です。最低賃金引上げが企業力を脆弱するのではなく、ビジネスの仕組みを利益がでるように作り上げていることに注目するべきです。

 縮み志向の日本。なんでも反対はどの団体、組織、グループでも同じです。反対や反発だけでは明るい未来を勝ち取ることはできません。変革・改革には一時的に強い痛みが発生します。しかしこの痛みを避けていては明るい未来はあり得ません。艱難辛苦をもろとせずに力強く前進する企業人が出現して欲しいものです。