「”ふどうさん”という漢字はどう書きますか?」。こんな質問があればほぼ100%の人が”不動産”と書くでしょう。しかし”負動産”という書き方もあるのです。「”負動産”ってどう言う意味?」と訊いてくる人は、相続にお困りでないと自白しているようなものです(笑)。
民法第86条第1項では「土地及びその定着物は不動産とする」と記載されています。土地以外の不動産の代表格は建物です。更に立ち木や石垣なども土地に定着しているので不動産です。ただし法的に保護する価値があるもの、土地と建物は不動産登記することで権利関係が明確となります。以後、ここでは不動産を土地と建物として取り扱います。
老朽化した建物が問題となっています。所有者がいれば解体等を行政庁らが要請することになりますが、その建物に住んでいなとなると解体処分もままなりません。居住用建物だと固定資産税等が減免される特典があるので、非居住者の所有者にとっては解体については直ぐには同意しません。 なお建物は目に見えるので、負動産化してもある程度はアンクションすることは可能です。
問題なのは土地です。土地には実は線が引かれています。しかしその線は現実には見ることはできません。どうしたら線を見ることができるのか。登記所(法務局)に行って所有する土地(の地番)が載っている公図・地図・字図の写を取り寄せます。図面には線が引かれています。土地には番号がついているので、隣接する土地(の番号)が分れば、凡そで自分の土地の所在が分かるという流れです。
相続した(田舎の)土地は直系の子であれば大筋で場所と地目、範囲(面積)が分ります。しかし子の配偶者や孫の時代になると見当もつかなくなります。「さて困ったものだ」。固定資産税は役所から納付書がくるものの、「本当はいらない」のです。こうした土地が増えていることから、令和5年4月に相続土地国庫貴族制度が始まりました。
この制度は一定の条件下で相続した土地(のみ)を国が払い受けるというものです。制度初年度の令和5年度と比べて令和6年度は4.8倍の1229件となりました。農地や森林を除く宅地などは3.8倍の744件でした。10年分の管理料を前所有者からもらうのですが、その土地を管理維持することを国はしなければなりません。国庫に帰属する土地が増えることは、この管理費用が逓増していくことを意味します。
受け取った土地を売却できれば良いのですが、そう簡単に行かないかもしれません。そこで国は有償又は無償で貸し出すという仕組みを考えているようです。公益に資する事業をやろうとする企業や団体に対しては無償で貸すのも良いかもしれません。この相続土地国庫帰属制度の今後に注目です。