自動車は日本経済の命運を握る基幹産業です。米国トランプ大統領が打ち出した関税政策により、日本のみならず全世界の自動車産業界で激震が走っています。米国内の大手GMやフォードらも同様で、通期の業績見通しが発表できない事態に陥っています。
日本自動車界のリーダー企業であるトヨタが前期(令和7年3月期)の連結決算の発表を行いました。売上高は6.5%増の48兆367億円で過去最高です。純利益は3.6%減の4兆7650億円です。この決算発表と共に今期(令和8年3月期)の業績予想も発表しました。
トヨタは日本国内、米国、欧州、東南アジア、そして中国と大きなボリュームを持つ販売拠点を複数持っています。よって米国や欧州の自動車メーカーよりトランプ旋風の影響を考慮してもなお、業績を立てることができるのでしょう。複数の販売拠点を持つことの重要性を再認識する今期予想の発表です。
トヨタの予想では今期の連結売上高は1%増の48兆5000億円、同純利益は34.9%減の3兆1000億円になるとしています。為替相場が円高に振れていることと米国の関税25%がやはり影響しているようです。トヨタ単体の全世界での販売台数は1040万と前期比で1.2%の増加を予想しています。
少し気になることを1つ。令和8年3月期のEVの目標販売台数を150万台としていましたが、目標台数を大きく引き下げています。台数は公表していないので分かりませんが、概ね半減の80万台としているようです。HVが好調だから、またEVの不振が目立つからという理由でEV販売台数を引き下げることは、私的には消極的な選択としか思えません。
良い情報としては国内生産台数300万台を維持することです。国内の他メーカーは米国の生産台数を増やす傾向にあります。これも一企業の戦略としては間違っていません。しかし日本国内の製造業を維持するには、国内生産台数は一定台数維持する必要があるでしょう。業界トップのトヨタが国内生産台数維持の姿勢を強調したのは少し救われた気持ちがしました。