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労使共に今年の賃金引上げ率には満足、しかし最低賃金の引上げスピードには困惑という矛盾

 今日(4/25)付の日本経済新聞に係る話題です。”迫真”という記事の見出しは【賃上げ持続の春4 最低賃金は推進役不在】。大企業のみならず中小企業でも賃金引上げがなされてきており、労働組合のナショナルセンターである連合幹部は安堵しているという。中小企業の経済団体である日本商工会議所会頭の小林健は「同床異夢ではなく同床同夢だ」と経営者側も賃金引上げに連帯を表明しているという内容です

 更に記事は続きます。賃金引上げについては労使協調・共振ではあるものの、毎年10月に改訂される最低賃金については労使共に問題と考えているとレポートは綴ります。

 最低賃金引上げへの対応を難しくしている背景の1つにトランプ大統領の存在が確かにあります。しかし労使が困惑しているのは、政府が2020年代の終わりまでに全国平均の最低賃金を1500円にしようとする政策課題です。現在は1055円ですから、あと5年間で445円UPを実現しなければなりません。

 賃金を上げて給与所得者の購買力を上げていこうという狙いは労使共にOKです。しかし最低賃金となれば別というのは不可解な論理だと思いませんか。何故積極的になれないか。その主要要因は中小零細企業ではほぼ最低賃金で働いている人達が多くいるという事実です。経営規模が小さいほど最低賃金引上げによる経営へのダメージは大きくなりやすいです。

 賃金の引上げは企業努力の問題です。ところが最低賃金引上げは法的強制力を持ちますので、経営者の意向とは異なって強制的に引き上げないといけません。その過程で「賃金引上げの原資をどこから持ってくるか」という資金繰りの問題に行きつきます。

 ”最低賃金引上げ”イコール”賃金引上げ”とならない所がこの問題のややこしいところです。労使の困惑は分かります。しかしミクロ的な視点では無理となっていても、将来の日本社会像や国際経済の中での日本経済というマクロ的視点で捉えれば、最低賃金引上げは避けて通れない最重要課題であると気づくのではないでしょうか。

 「中小零細企業が倒産する」という懸念も分かります。しかし汲々と延命している企業を救うために税金を投入するよりも、新規創業を目論む起業家への支援を厚くする方が投資効果は大きいのではないでしょうか。経済界や労働界をリードする人達には最低賃金引上げを超マクロ的視点から捉えて欲しいと思う私です。