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VWの直近3か月決算、前年同期比で64%もの大幅な減益

 世界の自動車業界の地図が大きく変わろうとしています。中国車の台頭著しい現在は、過去の日米欧韓

に中国を含めた日米欧韓中の5大勢力が世界市場で競っています。米国メーカーではEV専業のテスラに勢いがなくなりました。そして欧州ではVWやメルセデス・ベンツも苦しい状況に追い込まれつつあります。VWはドイツ国内の生産工場の閉鎖を検討しているようです。

 米国メーカーは中小型車対応が遅れました。また国内では豊富な原油があり石油産業保護の為に内燃機関を使用する自動車の撤廃ができない(?)問題も抱えています。欧州メーカーは地球温暖化対策ではHVではなくディーゼルエンジン車に集中投資をしてきました。このディーゼル車が失速したのが大きいようです。

 更に世界市場での戦い方、営業戦略にも大きな問題があった様です。欧州メーカーの雄はドイツでかつVWでしょう。VWは米国市場の比重が低く、中国市場と足元の欧州市場の2拠点で大きな売上を稼いでいました。その中国では中国メーカーが低価格EVを発売しVWの売上高シェアーは低下する一方です。

 日本メーカーの代表格、トヨタの営業戦略は米国、日本、中国、そして東南アジアと分散しています。米国で大きな利益を稼いできましたが、売上を稼ぐ地域を世界各地に分散させたことにより、大幅な減収や減益の大波を受けるまでには至っていません。

 また製品開発にもVWとトヨタでは大きな違いがありました。VWは前述のとおりディーゼル車に重きを置きHV対応は後手に回りました。HVはトヨタが開発した省エネ技術です。トヨタはHVを主体にFC、燃料電池車等々全方位戦略を採っています。選択と集中という大原則からはトヨタが選択した開発戦略は少々心配の域を出ることはできません。

 しかし米国と欧州でのEV市場が混乱している中、欧州でもHVが徐々に認知され始めました。HVの販売比率が高い日本メーカーは円安効果もあり、売上高と利益を大きく伸長させました。しかし中国メーカーの低価格EV車の輸出増は今後も続いていくでしょう。長期的にはEVへシフトしていくことは確かです。その一方で中国メーカーが世界市場を席巻していくことに多少のエレルギーを抱く人たちもいるかもしれません。

 以上色々と綴ってきましたが、自動車メーカーの製品開発戦略と販売戦略の違いにより、大手メーカーでも一挙に業績悪化という憂き目にあうことの恐ろしさを実感しました。