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新NISAで毎月1兆円の現金が国外流出。その結末は?

 円安の行方が不透明です。対ドル160円どころか170円台も視野に入っているのではないでしょうか。円安が進むと海外からの輸入価格が上昇し、最終的には物価の上昇となって国民生活に負の影響が発生します。

 今春、中小を含む企業は賃金引上げを行いました。賃金据置き等を行えば労働市場が流動化している中、新入社員の確保はままならずまた既存社員が賃金の高い企業へ転職してしまう恐れもあるからです。人財確保の為には賃金引上げ圧力は大きくなる一方です。

 円安は輸出主導型企業にとっては利益押上げ要因にはなります。しかし日本国全体でみればマイナスの影響の方が大きいのです。為替相場を動かす大きな要因は各国の金利差です。この金利差では日本は本当に弱い立場に置かれています。

 更に「円を売って外貨に換えるという行為も円安要因です。この「円を売る」という行為で最近注目され始めたのが新NISAです。新NISAで米国を中心に外国の株式や債券を買う動きが急増しています。

 日本人が外国の有価証券に投資するのですから、当外国の通貨で売買をしなければなりません。その為に「円を売る」のです。この新NISA関連で円を売るというのが月平均で1兆円も発生しているそうです。この動きが止まることはありません。識者の予想ではこの1兆円からまだ上がる可能性すらありそうです。

 私はこの動きを悲観的に観ています。160円で外国の有価証券を購入したとします。もし将来に130円まで円高が進むとすれば、時価評価は18.8%(30円÷160円)目減りすることになります。購入した有価証券を短期で売買したりすると当該国の市場で価値が上昇していても為替評価損が発生し、結果として円で受け取る金額が大きく目減りすることがあり得るのです。

 実質賃金が連続してマイナスとなる中で自己資産・財産を防衛しようとする行動、これを否定することはできません。しかし外国有価証券への積極的な投資は周り回って自分の首を絞めることにもなりかねません。本当に難しい時代になりました。

 解決策の主柱は「賃金を確実に大きく引きあげていくこと」です。こうして国内市場を成長軌道に載せることで、諸外国へ向いている有価証券市場への投資を国内市場へ強引に向けさせることができるのです。諸外国への投資を勧めている金融業者は国益の増大という観点もくれぐれもお忘れなきよう願いたいものです。