ここ数年最低賃金が上昇してきています。私が士業を開業した30年ほど前、最低賃金の引き上げ額は毎年10円未満で、一円玉を幾つ積むかという低水準の年が続きました。ここ数年の大幅(?)な引上げの政府方針により毎年50円弱の引上げが行なわれています。経営者目線で考えると「最低賃金引上げが続いて大変だ!」と半分諦め、半分憤りの心境で毎年10月を迎えているに違いありません。
昨年の改定で国平均の最低賃金は1004円と1000円の大台に乗りました。GDP等国力を国際比較する指標がありますが、最低賃金の国際比較もあるようです。OECDのデータから内閣府が各国の最低賃金を調べたと日本経済新聞3月19日朝刊で報じていました。一般労働者の賃金中央値に対する2022年(令和4年)の最低賃金の比率が新聞に載っていました。
フランスと韓国が60.9%、英国は58.0%、ドイツは52.6%でした。EUでは2022年10月に[最低賃金指令]を採択しました。この指令では加盟国が最低賃金を引き上げる際の目安として中央値の60%を目指すとなっています。
さて我が国日本の実績値はどうでしょうか。日本は45.6%だそうです。2012年(平成24年)時点では38.3%だったので、10年間で7.3%UPしたものの、OECD各国の水準と比較すると日本の最低賃金の低さが際立ちます。
最低賃金引上げをミクロ経済で考えると企業の賃金支出額が増えることになり、コストアップに繋がります。しかしマクロ経済で考えると賃金上昇は税・社会保険料等を控除した手取り額も確実に増えるため、国内市場規模の拡大に繋がります。一企業人としては「うっ!」と呟いても回りまわって自社の売上増加など好影響を与える可能性も高まります。最低賃金の引上げを否定的に考えるのではなく、肯定的に考える習慣を身に着けてほしいものです。