2月26日付の日本経済新聞に面白い記事が掲載されていました。見出しは[非正規の手当格差、指導急増][厚労省、23年度は12倍の1700社超に]とあります。非正規社員や有期雇用社員に係る労働条件等についてはパートタイム・有期雇用労働法が適用されます。職務内容等に明らかに差異がない限り、正社員とパート等非正規社員又は有期雇用社員との間に不合理な格差は認められないのです。
パートタイム・有期雇用労働法は中小企業にも2021年(令和3年)4月から全面適用されています。この法律は最高裁等の幾つかの判例を参照し法制化されました。関心を持たないといけないのは第8条です。どのような場合に不合理な格差となるのかが条文化されています。
新聞記事によれば通勤手当や慶弔休暇について指導があったと記載されています。仕事・職務の内容や職務遂行能力等に差異がある場合は、基本給等で正規社員と賃金差を設けることはOKです。仕事の質やその内容、担当する仕事領域が異なれば、それに呼応する賃金が異なることは不自然ではないからです。
しかし通勤手当についてはOKといかない場合が出てきます。職場に通勤するという事情は仕事・職務の内容とは別次元の問題です。パートさんが通勤するのも、正社員が通勤するのも同じ通勤というスタイルは同じです。よって両者の間に距離単価等で差異を設けるのは不合理と判断される可能性が大です。
慶弔休暇も同様です。祝い事や忌み事は正社員や有期雇用社員でも同じ割合で発生するはずです。理屈を並び立てても両者に差異を設けるとしても納得はいかないでしょう。
中小企業にもパートタイム有期雇用労働法が全面適用になって3年経つのですから、所轄官公署も「法律の認知度の確認と不合理な格差がないか監督に出よう」と考え始めるのは当然でしょう。注意すべきは諸手当の差異です。諸手当は仕事・職務の内容との関係性が薄いからです。中小企業の経営者の皆さん、今一度賃金制度の内容、特に諸手当について不合理な格差がないかを確認してみて下さい。