日本のGDPがドイツに追い越されて世界第4位に転落したということが話題になっています。そして南アジアの雄、インドが日本に追いつく気配を示しています。数年のうちに日本のGDPランキングは世界5位になることは確実です。
ドイツに抜かれて世界4位となったことの犯人捜しがなされようとしています。国際比較をする際にどの国の通貨でするかで数字は変わってきます。世界の基軸通貨であるドルを使用することが基本ですから、当然に日本のGDPは目減りします。実質成長があっても極端な円安となっている現在、ドル建てGDPが目減りするのは当然です。ドイツはユーロを使用していますが、ユーロも対ドルで安くなっているとしても円ほど安くはなっていません。よって相対的にドイツのGDPが高くなることは当り前です。
為替相場で円安となった原因はどこか。一部の人達はアベノミクス主犯説を唱えています。故安倍首相は3本の矢を提唱しました。金融緩和×積極財政×民間投資誘発の3つの矢です。金融緩和は市中に流通する通貨量を増やすことで物価上昇を期待しました。デフレ解消が狙いだったのですが、これが不発に終わってしまいます。実質賃金が低迷している中、積極的に消費にお金を振り向けようとしなかったのです。
積極財政で国の借金はドンドン増えていきました。これがまた円安を間接的に誘発してしまいます。最後の民間投資の誘発も、企業は国内向けの設備投資を怠ってきました。国内市場が停滞しているのですから、ある意味では仕方のない判断だったかもしれません。GDPのうち民間投資は約13%ほどあります。投資を怠るのですか、建設投資や機械・設備投資市場が拡大することは期待できません。
このように考えてくると、長い期間賃金上昇がなかったことによる国内市場規模の停滞をトリガーに企業は国内投資を控え、国内市場は更に冷え込んできたのです。需要が弱含みだった為に、供給サイドでも投資に躊躇したのです。儲かっている企業は投資資金を国内ではなく海外へ振り向けました。円を売ってドルを買うのですから、円高へ反転することはあり得ないのです。
国益ではなく自社益を優先、また今の消費をするのではなく将来に備えて貯蓄をする国民。このような心理状態が円安を招いたのです。経営者はもっと設備投資をしましょう。私達国民はもっと消費をしましょう。需要マインドが強まれば、供給側の投資も誘発されます。日本国民全員が今一度、「国益とは何か」を考える時期になっているのです。GDPがドイツに抜かれた主因はアベノミクスにあるのではないのです。経済学や心理学・社会学を理解できる人が分かる簡単な方程式を理解できない人達が多いのに驚いています。