現代では経済活動を行うには地政学リスクを無視することはできません。日本の近隣で大きな影響を与える諸外国といえば、中国や韓国、台湾、そしてASEANでしょうか。それに加えてインドの重要性が急速に高まってきました。今日は中国経済の先行きと日本に与える影響について論考してみたいと思います。
中国ではコロナ禍が大波として襲い経済活動が停滞しました。言わずと知れた都市封鎖を完璧!に行ったからです。その結果、消費活動が停滞し現在でも物価上昇率は低いままです。そして所得が上がらない為に買い物控えも出ていると報道されています。
更に深刻なのが不動産大手企業の信用不安です。社債の償還や利払い停止も発生し、当該企業の格付けが引き下げられています。中国では不動産業のGDPに占める割合が2割を超えているようです。不動産の失速はGDP成長率を押し下げるのです。不動産売買市場も低迷しマンション等住宅価格は下降しているようです。
日本の債務は1200兆円と膨大ですが、中国でも国や地方政府の債務が急激に膨らんでいます。地方政府の主な収入源は不動産賃借権の売買によります。またインフラ投資を積極的に行うことで、民間投資を呼び込むことが地方政府の主要政策となっています。地方政府の直接投資では都合が悪いのか、地方政府が間接的に設立し運営する投資会社がこれらの事業を展開しています。投資会社の債務を地方政府が保証するため、投資会社が行き詰ると地方政府の財政は急激に悪化します。これは日本のバブル期とその後の混乱を連想します。
ということで来年度以降、中国経済は失速気味になること間違いありません。日本のGDPの外需依存度は12%程度です。人口が1.2億人と世界順位で第9位にランクされている大きな内需が日本経済の底辺を支えています。輸出主導型企業が製品を中国へ輸出できないとしても、その影響はまだ軽微だと言えなくもありません。
随分昔の話で恐縮ですが、「米国がくしゃみをすると日本も風邪をひく」と言われた時代がありました。日本経済と中国経済は密接に関連していますが、「風邪をひく」というよりは「寒気を少し感じる」という程度になるでしょうか。
日本企業も地政学リスクを考慮して中国への投資額を減らしています。減らした分はベトナム等のASEAN諸国に振り向けています。そしてまた平均年齢が25歳と極めて若く、人口14億人超を抱えるインドへの投資額を増やしています。中国経済に頼らない日本経済を作り上げていく必要がありそうです。