大手企業を中心に若手社員が退職する例が増えてきているようです。厚労省の調査では、2020年(令和2年)に入社した大卒社員の4人に1人が3年以内に退職したようです。10年前は5人に1人だったので退職率は高くなってきています。
働き方改革が叫ばれてきて以来、大手企業では労働時間短縮や福利厚生面の改善に力点を置いて労働条件改善に努めてきています。入社希望者からブラック企業と名指しされて、優秀な人財を確保できないという事態を避けるためです。よって全体として処遇改善は進んでいます。にも拘わらず退職者が増えているのはどいうことでしょうか。謎解きのようなジレンマを感じます。
ヒントは若手の成長意欲にあるという見方があります。若手は成長したいのです。処遇改善が進む大手企業では成長の機会を見出せないというのです。ゆでガエル現象を若手は望んでいないのです。もっと自己を成長させる厳しい仕事現場を求めているというのです。ここまで来ると今の若手社員がそんなことを望んでいるとは不可思議だと思わざるを得ません。
ここで切り口を変えてみましょう。経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏の人事政策についての考えを参照してみます。会社は多数の人達が集っていますが、この人達は3つの層に区分することができると松下翁は主張しています。上位2割は自燃型で成果をドンドン上げる人財の層。下層も2割あり、人災や人罪と言われる人達が巣くっています。中間層は6割です。上位2割の層につくか、または下位2割の層にくっつくか日和見的に様子を伺っている人達です。
入社3年以内に4人に1人退職するとなれば、上位20%にいる人達が積極的に自己成長を求めているという証だと言えなくもありません。これに引っ張られて中間層の6割の人達も自己成長に対する意欲が高まりつつあるのかもしれません。
会社は人材を人財や人剤へと育てないといけません。日本の企業の人財投資の割合は極めて低いのが現実です。欧米諸国では売上高比で1%~2%の資金を人財育成に費やしています。方や日本、0.5%以下がほとんどです。人財育成に資金を投入していません。だから若手は自己成長の機会を求めて転職を行うのです。
日本企企業は沢山の資金を人財に向けて投資しましょう。今の状態が続けば、企業は長い坂道を加速度がついて下っていきます。日本企業の過半がそうなったら日本経済はどうなるのでしょうか。考えるだけでも恐ろしくなってしまいます。