雇用保険制度が大きく変わりそうです。現在は週の労働時間が20時間以上であれば、雇用保険被保険者資格を有するとして資格取得の申請をハローワークへ届け出をしなければなりません。ところが、この週20時間という時間が10時間へと大きく引き下げられる可能性が出てきました。
雇用保険の被保険者が失業すると失業手当(基本手当)が支給されます。仕事を探す求職活動が前提ですが、仕事を失うと給与収入がなくなり、生活が不安定となることを防止するための給付です。その外に育児休業や介護休業する人にも所定のルールに従い、雇用保険制度から給付金を受け取ることができます。休業選択した人に給付金を支給することで離職を防止しようという施策意図があります。
またコロナ禍で一般的に知られるになりましたが、雇用調整助成金という制度もあります。コロナ禍では緊急的に雇用保険非被保険者にも支給されました。従業員の能力開発や働く職場の環境改善等にも助成金が支給されています。
このように雇用保険被保険者には、また被保険者を雇用し職場環境等の改善に取り組んでいる企業にとっては、手厚い保護の網がかけられているのです。このような制度を維持するには財源が必要です。財源の一部に国庫補助がありますが、残りは使用者と被保険者とが折半します(助成金等の負担は使用者が全額負担)。コロナ禍で財源が枯渇した為に昨年10月に保険料率が上がりました。保険料率が上がるということは、企業にとっても働く従業員にとっても資金負担が重くなるということです。
本稿の序盤に被保険者資格の要件が週20時間労働から週10時間労働へ引き下げられる予定だと記載しました。これにより約500万人が被保険者として新たに誕生することになりそうです。雇用保険の財源が膨らむことで、厚労省が進めている育児休業や介護休業の取得率が高まる可能性があります。しかしその一方で、国民負担率が高まることへの警戒心も高まります。厚労省が2028年度(令和10年度)中の施行を目指そうとしているこの改定、今後の動きに注目です。