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アマゾン配達人、個人事業主だが労基署が労災認定

 今日(10/5)の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が掲載されていました。見出しは[アマゾン配達員 労災認定 個人事業主 労基署、「労働者」と判断]とありました。要約すると横須賀労働基準監督署が10月4日にアマゾンの商品配達をする個人事業主の業務上事故を労働災害と認めたというのです。これについて私見を本稿で述べたいと思います。

 労災保険は使用者の指揮命令のもとで労働をしている際に、不幸にして労働災害に遭ったときに被災者を支援する制度です。通勤途上での災害も対象となっています。使用者も特別加入等を行うことができ、労働者と同様な仕事に携わっていれば、労災認定を受けることができます。個人事業主も一人親方等の認定(第2種特別加入者)を受ければ、労災保険の被保険者となることができます。特別加入の認定は労働局長が行います。

 本事案はインターネット通販大手のアマゾンの商品配達を個人事業主(フリーランス)として請け負っている人が仕事中に事故に遭ったというものです。本人とアマゾンとの契約関係が雇用契約であれば、有無をいわずに労災認定される案件だったのでしょう。しかし両者の間は、商品を運搬・配達するという委託契約(請負契約)であったため、アマゾンは労働者性を否定していたに違いありません。それでは労働者性とはどのような基準なのでしょうか?

 労働者性を考えるに当たって重要な法律が2つあります。労働基準法と労働組合法の2つです。2つの法律では労働者性の考え方について多少の違いがあるようです。しかし概ね次のような考え方で労働者性を把握しています。

 第一に「使用従属性に関する基準」であり、第二に「労働者性の判断を補強する要素」です。最初の「使用従属性に関する基準」は更に幾つかの判断要素に分かれます。次段階として①「指揮命令下の労働に関する基準」と②「報酬の労務対償性に関する基準」に大別されます。次段階の2つは更に細分化されます。①は「仕事の依頼に対する諾否の自由」「業務遂行上の指揮監督」「場所的時間的拘束性」「代替性」の4つ細分化されます。②は「報酬の算定方法や支払い方法」について判断を行います。

 二つ目の「労働者性の判断を補強する要素」のアプローチも、「事業者性の有無」と「専属性の程度」とに大別して考察をします。「事業者性(の有無)」とは、「使用する機械・器具の負担関係」「報酬が社員の給与額より多額か」「商号、ブランドの利用」などが判断基準となります。「専属性(の程度)」は「他社の仕事の受託可能性」「十分な報酬であるか」などで判断されます。

 横須賀労働基準監督署長はどのような判断基準を用いて今回の結論に至ったのか、とても興味深いものです。今回の労働基準監督署長の判断はフリーランス、個人事業事業主の働き方や報酬について議論になっているところ、労働者側に有利な判断となっています。今回の認定が先例となる可能性が高いです。よって当該の監督署長は霞が関のキャリアに判断を求めたものと考えます。詳細は今後明らかになってくると思います。追加の情報に関心を持って臨みたいと思います。