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厚労省が年収106万円又は130万円の壁対策を発表

 厚生労働省がいわゆる[年収の壁]に係る対策を発表しました。厚労省の管轄は社会労働保険関係ですから、財務省管轄の税金の壁についての言及ではありません。さて年収の壁とは何ぞや?ですが、年収が106万円又は130万円になると社会保険料負担が発生し、結果としてパートさんらが労働時間を短縮する可能性が高まるというものです。さて厚労省が打ち出した対策とは何でしょうか。

 第一に、106万円の壁を突破する為の対策を整理してみます。該当するパートさんが「社会保険料を負担したくない」と主張するとします。会社は従業員負担1/2と会社負担1/2の合計2/2を翌月に納付します。従業員から社会保険料を徴収しなくても、会社は従業員分を含めて納付する義務が課せられています。そこで会社は「勤務時間を短縮されては労働力不足が深刻になる」として、従業員から徴収することをあきらめる可能性も出てきます。とすると会社は資金負担が重荷になってくるのです。そこで厚労省はこのような対策を便宜的に行う会社に1人当り3年間で最大50万円を助成することとしました。

 第二の対策です。現在のルールでは、年収が130万円を超すと主たる生計者の(社会保険に係る)扶養から外れます。賃金引上げにより年収が130万円を超す可能性が高まると、これまた労働時間を減らそうとする心理的圧力がかかります。経営者はもっと働いてほしいのです。また従業員の本心もそうでしょう。そこで厚労省はウルトラCの秘策を考えました。(一時的に?!)年収130万円を超えても2年間は扶養のままで良いというものです。これを秘策を言うべきか、また愚策というべきかここでは論考を慎みます。

 第三の対策です。週の労働時間を4時間以上延長する場合は1人当り30万円助成するというのです。試みに計算すると、106万円超した時に発生する社会保険料の負担分が、働く時間を週4時間増やすことでほぼ同額となる見込みです。30万円という額は社会保険料の約2年分の額に相当します。

 さてさて、当職事務所では私と副所長が社会保険労務士です。副所長とこの厚労省の対策について議論してみました。共に「?!?!?!です。功罪多い対策だというのが結論らしきものです。言えることは抜本的対策にはなっていないということ。小手先の対策になっているということです。来年2024年10月には106万円の壁が、従業員数51人以上の中小企業まで拡大されます。ひっとしたら、その時期に合わせて社会保険加入者を増やすために従業員数による制限を取っ払うかもしれません。そうなると週20時間以上働く従業員は学生等の非該当者を除き、数百万いや千万人単位で激増する可能性があります。そうなってもその場しのぎの対策で切り抜けることができるのでしょうか。不安でいっぱいです。