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年額換算のGDP589兆円、GNI625兆円

 国富の計算で有名な指標はGDPでしょう。GDP(Gloss・Domestic・Product)は国内で生み出した付加価値の総額です。その外にGNIという指標もあります。GNI(Gloss・National・Income)は日本に住む人や日本企業などが国内外で得た所得の総額を言います。

 9月15日(金)の日本経済新聞に[国民総所得 最高の625兆円]という見出し記事がありました。この国民総所得がGNIなのです。この記事には別の見出しもついていました。[企業の稼ぎ 家計に届かず]と[賃上げへ波及 重要に]の二つです。

 今年4月から6月の3か月間のGDPは年額換算で589兆円でした。600兆円の大台までにあと11兆円です。600兆円に到達すると別世界が見えそうな気がします。GDPは2019年10~12期と比較して7.2%伸びました。この要因の一つは物価高によるコストアップ分の販売価格への転嫁がありそうです。販売数量が増加したというよりは単価UP分の寄与度が高いように思います。それでも600兆円にあと11兆円まできたという印象が強いです。ところが既に600兆円に達しているものがあります。それがGNIなのです。

 今年4月から6月の3か月間のGNIは年額換算で625兆円でした。GDPとの差額、36兆円は海外からの利子や配当に係る所得です。日本企業は国内市場が停滞しているもあり、中国や東南アジア等海外に積極的に投資をしてきました。また国内で稼いだ資金を元に海外企業のM&Aも行ってきました。これら海外投資の見返りが大きく膨らんできています。この点のみ考えれば決して悪いことではありません。ただし国内に投資をせずに海外投資に積極的という部分を除けばの話ですが...。

 企業はこのように海外から利子や配当を沢山もらっています。それが企業業績をUPさせます。海外からの収益は損益計算書では営業外収益でカウントされることになります。営業外収益ですから、国内事業からの儲けを示す営業利益とはリンク度が低いと推察します。新聞記事は同期間の上場企業の経常利益が前年比で3割強増えたと報じています。

 経常利益が3割増加とは大きな数字です。その成果を社員の給与UPに連動させてほしいものです。大企業に勤める労働者の割合は3割です。この3割の労働者の賃金が急上昇すれば、残り7割が勤める中小企業の経営者も賃上げに重い腰を上げなくてはなりません。先頭集団が賃上げをすれば、中盤の集団や後段の集団、さらには最後尾の集団も「仕方なくでも」賃金引上げをしなくてはなりません。

 日本経済の低迷は供給と需要のバランスの悪さです。需要増大にカンフル剤を打たざるを得ません。カンフル剤役を国の財政膨張に頼ってはいけません。大手企業の経営者にはもっと賃上げに積極的に対応してほしいものです。ちなみに清成事務所の職員に対する今年の賃金引上げ率は5.5%です。今春の賃金引上げ率は労働組合の連合の試算では4.5%だったそうです。清成事務所の方が1%高かったようです。