国民皆保険制度は昭和36年に整ったと言われています。日本では公的な医療制度があることで、比較的安価で高度な医療を受けることができます。その結果、世界に冠たる長寿国家を実現しています。しかしこの医療保険制度が崩壊の危機に直面しています。
日本経済新聞9月15日朝刊に注目すべき記事が掲載されていました。見出しはこうです。【医療保険、現役負担4割増】【10年超で膨張、健保財政難一段と】【少子化対策財源上乗せ余地なく】。こんな見出しをみて「うっ」と思わない人はいないでしょう。記事の内容をかい摘んで説明してみましょう。
健保とあるのは健康保険組合のことです。75歳未満の人は大きく3つのルートを通じて医療保険制度に加入します。①国民健康保険は自営業者等を主体とした医療制度です。②中小企業等に努めている人達は協会けんぽ(全国健康保健協会)に加入するのが一般的です。③大企業は従業員数が多いことから健康保健組合を設立し上乗せ支給するなどしています。なお75歳以上になると既存の医療制度から切り離されて後期高齢者医療制度に強制加入となります。
この健康保険組合の保険料が10年間で41%も膨らんだというのです。41%というば極めて高い伸び率です。金額に買えると21.8万円から30.8万円と9万円伸びています。「なんだ金額としては大きくはないんだ」と考えてしまいそうです。しかし自分達が利益を受ける医療費支出では、10年間で10.9万円から13.1万円と2.2万円しか増えていません。言葉を換えれば2.2万円の利益増を享受するために9万円のお金支払っている!のです。
この差額6.8万円はどこに飛んだのでしょうか。大半は後期高齢者医療費の増加に伴う負担金となって消えたのです。後期高齢者医療費は受益者である75歳以上の被保険者が1割、国が5割、残り4割を現役世代からの負担で賄っています。現役世代の負担とは、先に挙げた3つの医療制度から、応分の負担金を受け取るということです。
高齢者が増えています。75歳以上の後期高齢者も増え続けています。長寿であることは喜ばしいことではありますが、長寿になるほど医療費等の必要費用は増加するのです。今後も後期高齢者医療費は確実に膨らんでいきます。医療費そのものの支出を抑制する施策が必要です。断固としてやるべきです。
現役世代からの支出を増やすためには、現役世代が負担とならないような金額にするべきです。その手段の一つとして賃金引上げがあります。医療費が増加してもその増加額以上に賃金が増えれば負担感は軽減します。無駄な費用や取組みは排除すべきですが、根本は賃金の引き上げではないか。私はこれが解決策の最上位にランク付けされると信じて疑っていません。