7月28日に日本銀行が金融緩和政策の一部を変更しました。金利上昇を抑制するために採用していたYCC(イールド・カーブ・コントロール)の上限を、これまでの0.5%から1.0%へと引き上げたのです。これにより長期金利が1.0%まで上昇する可能性が高まりました。
市場関係者の反応はどうでしょうか。外国為替や金融、株式、債券等各市場の素人である私にはよく理解できませんが、市場関係者の反応は概して低いようです。確か今年の3月だったと思いますが、日銀前総裁黒田東彦氏が上限を0.25%から0.5%へと変更した時は、円の対ドル為替は一定期間円高にシフトしました。今回も一時的には138円台まで上昇しましたが、現時点では142円台へと政策変更前に逆戻りです。
海外輸出比率が高い国内企業の想定レートは130円から135円としているところが多いと新聞記事に載っていました。仮に140円で業績予想を立てていると、円高に振れたときは為替差損が生じます。上場企業は確実な業績UPが経営者に常に求められます。想定外(!)の円高シフトにより業績悪化となれば、経営者の状況判断能力に疑問符がつきます。
よって経営者は安全パイとして高め(!)の想定レートでの業績見込みをしておけば、予想が外れて円安に振れた分、為替差益がオンされる訳です。こうして考えると大企業の経営者達は円高を見込んだ事業経営をしているとも言えそうです。それにしても2年前までは110円前半で推移していましたので、国際市場での円の力はぐ~んと落ち込んだままです。
日本銀行は消費者物価指数上昇率に強い関心をもっています。また金利引き上げによる投資縮減や国内景気の冷え込みに警戒しているようです。経営者は予防線を張っているのです。「案ずるより産むが易し」。日本銀行は景気後退を心配するよりも、経営者の経営力を信じてほしいものです。
今年度の名目GDPが600兆円を超えるという予想が出ています。物価が上昇することで名目上のGDPが増えるとしているのです。企業業績も堅調です。企業物価が上がり、消費者物価も上がっているために、販売価格の引上げを行ってきた成果として、売上増加が大きく貢献しているのです。
今日の特報ニュースでトヨタの直近四半期の営業利益が初の1兆円越えの1兆1209億円(前年同期比93.7%増)となったとか。金利上昇圧力は一時的には経済活動への冷やし玉となるかもしれません。しかし賃金引上げ、販売単価UP、インバウンド復調、株式市場の盛況等々複数の出来事が絡み合って、日本経済は復活への機会をうかがっているように感じるのです。