日本経済が回復傾向に向かっているらしい(?)です。景気の状況を分析する調査や統計は多種ありますが、今回は景気ウォッチャー調査を取り上げてみたいと思います。調査主体は内閣府で、調査結果は月例経済報告や地域経済動向、地域の経済(※3つとも内閣府)といった公表物に活用されているようです。
さてこの景気ウォッチャー調査ですが、5月の調査では現状判断4か月連続ブラスという結果が出たようです。5月DIは55.0で長らく苦しんできたサービス業も上昇しました。この調査は「良い」から「悪い」までの5段階から回答してもらうもので、50以上であれば景気は良し(上向き)と判断するようです。私は調査方法を少し詳しく知りたいとネットで調べてみました。その結果は驚くものでした。調査結果を安易に信頼していいものか、疑念が生じたのです。
点数の付け方は次のとおりです。「①良い」1、「②やや良い」0.75、「③どちらとも言えない」0.5、「④やや悪い」0.25、「⑤悪い」0と置きます。これに各回答区分の構成割合を乗じて合計して算出するというのです。例えば、構成比が①20%、②30%、③30%、④20%、⑤10%だと合計は55となります。また①10%、②30%、③15%、④30%、⑤15%だと同47.5となります。私が?!と感じたのは、1や0.75、0.5という点数の付け方です。
景気ウォッチャー調査では50を基準に上かまたは下か、数値が上昇か又は下降かなどと分析し、「景気は良くなっている(悪くなっている)」と論じています。ですから点数の根拠が客観的かつ合理的であるかはとても重要です。
一般的に複数の項目があるときは特定の基準を用いて順位を決めていきます。AとBがあり、100点満点でAが80点、Bが70点だとAが上でBが下です。そして両者の差異である10点は客観的に意味のある違いがあることが分かります。ここで点数が78点であるCを追加します。成績順は1位A、2位C、3位Bとなり、点数格差はAとCが2点、CとBが8点です。順位だと1位と2位との差異は1、2位と3位との差異も1です。この例の順位という区分方法は合理的かもしれませんが、有意な客観的な基準であるとは言えません。
私は景気ウォッチャー調査における各回答項目の点数の付け方に疑問が生じたのです。「良い」と「やや良い」の0.25の差異と、「やや良い」と「どちらとも言えない」の0.25差異は「同じ値という把握しても良いのか」ということです。この点数の付け方だと「良い」は「どちらとも言えない」の2倍のインパクトがある!ということです。「私はおかしい」のではと直感的に思いました。よって調査結果が50を超えたから「景気は上向きになっている」と判断することに大きな疑問を感じざるを得ません。
なお、毎回の調査では同じ基準で適用しているのですから、数値結果を時系列に診ることには意味があると思います。例えば3回連続の調査で、50、52、55と得点が上がっているのであれば「景気は良くなりつつある」と言ってよいと思います。
いずれにしても、円安が続く中で法人税等税収が70兆円に達するとかで、日本経済は少しずつ良くなっているようには感じます。この勢いを維持しつつ、日本が抱える多くの難題を一刻も早く解決してほしいものです。