5月2日付朝刊の日本経済新聞に興味深い記事が掲載されていました。[地域金融のいま]という連載で見出しは[大分銀、自治体などとタッグ][「3本の矢」で経済底上げ]とありました。私が注目したのは大分銀行の預貸率が58.9%で、九州・沖縄地区の地銀で60%を下回るのは同行だけという記述。この預貸率は第一地銀62行平均より約15ポイント低いとも書いてありました。
さらに預証率にも注目です。同行の預証率は36.9%と第一地銀平均より約14ポイントと高いというのです。この二つの事実から次のことが言えそうです。第一に同行が大分県内を中心に中小企業等への貸出しを余りしていないということ。第二に余った資金を株式や債券等有価証券へ投資し運用益等を得ているということ。折しも昨日は米国発の金融ニュースが世界に向けて発信されました。そのニュースは「また米銀が経営破綻した」というものです。米国の銀行破綻では過去2番目に多く、今年になって3行目の破綻となったのです。私の中ではこのニュースと今日の日本経済新聞の記事が重なったのです。
預貸率とは預金残高に対する貸出残高の割合を言います。預証率とは預金残高に対する有価証券残高の割合を言います。預証率が高いメリットは有価証券の運用益が膨らむと銀行の利益(業務純益)も大きくなります。逆に有価証券が不良債権化するリスクもあります。日本銀行や各国中央銀行の政策金利の動向により、銀行の収益力が低下する可能性もあります。今年に発生した米国の3つの銀行破綻の事例は、FRBがインフレ対策を念頭にした急速な金利引き上げが端緒になったという事実を理解しておく必要があります。
大分銀行は大分県内の地域金融の要といって良いでしょう。金融機関にとって頑張る中小企業を応援するという姿勢は、資金面でサポートするということとほぼ同義語です。金融機関からの融資をレバレッジ(梃子の原理)にして業容を拡大するのは融資を受けた経営者の責務ではあります。しかし貸出す側の融資姿勢が慎重で頑なだと、経営者の「会社を大きくしたい」という積極的な意欲が削がれることにもなりかねません。
大分銀行には不穏かつ不安定、不確定な金融政策に左右されやすい有価証券市場での資金利用を少しずつ減らしてもらい、その資金を大分県内の中小企業への融資に回してもらいたいものです。今日の記事を大分銀行の行員達を含め、融資先の企業経営者も読んでいると思います。読んだ人達がどのように理解し解釈されるのかは分かりません。大分銀行の今後の出方に注目したいところです。