上場企業等大手企業の賃金引上げ交渉の結果がメディアにて続々と報じられています。上場企業では約7割が組合側の要求に対し満額回答をしています。昨年来の消費者物価高騰により実質賃金が目減りしていることに加え、優秀な人財確保の為には「背に腹は代えられない」と昨年までの賃金引上げ抑制姿勢を改めているようです。
賃金引上げは中小企業や内需型産業まで波及してきています。またパート等非正規労働者まで影響がじわりと寄せてきています。繊維、流通、飲食等の産業界の労働組合の中央団体であるUAゼンセンが中小企業を含めたパートの賃金引上げ交渉の結果を公表しています。それによると2次集計時点で、中小企業を含めたパートの引上げ率は5.84%だそうです。時給換算で61.2円相当額になります。正社員の賃上げ率は4.34%ということなので、パートの引上げ率は正社員のそれよりも1.5%上回っています。
パートの賃金に関しては、どうしても最低賃金に影響される傾向があります。正社員は優秀な人財確保の観点から、基本給の他に諸手当を充実させる傾向が強いです。その一方で労働力不足を補充するという意向が強いパートは時間給換算の基本給と幾ばかりかの手当が付く程度です。よって経営者は最低賃金を常に意識しています。
この最低賃金ですが、過日にレポートした通り、今年の最低賃金引上げ額は40円を中心とした攻防になりそうです。政府、財界、労働界の三者で会合をもった政労使会議にて、岸田総理が全国平均で1000円達成を今年中に成し遂げたいと表明しました。現在は961円ですから39円の引上げを暗に示唆したのです。
さて苦しい経営状態が続く中で、「うちは賃金引上げなどできる状態ではない」と中小企業経営者は考えているかもしれません。それは確かでしょう。しかし賃金引上げをしなければ、また引上げ額が低いほど社員達は収集した他企業の情報と比較して「今が辞め時だ」と考えるかもしれません。また採用がままならず、人不足の状況から脱しきれない可能性が高まります。
賃金引上げ原資をどこから捻出するのか。社長一人で悩むのではなく、現場一線で働く社員やパートまで経営の実情を素直に説明した上で、生産性向上等のアクションを起こして欲しいものです。「前門の虎、後門の狼」ではありませんが、苦労・苦悩・辛苦をするのであれば、前に進む方が打開策は見つかり易い。この様な思考で自社の賃金引上げに取り組んでほしいものです。