日本を代表する企業グループの1つ、セブン&アイ・ホールディングスの創業者伊藤雅俊氏が3月10日に死去しました。98歳でした。セブン&アイHDはCVS最大手のセブンイレブンを中核企業に、GMS業態のイトーヨーカドー、百貨店業態の西武・そごう、レストランのデニーズ等各業態で上位にランクされる企業を抱えており、グループ総売上高は10兆円を超えています。巨大グループを創った伊藤氏の死去は同グループの経営陣にどのように映ったでしょうか。
同グルーブは昨年末に西武・そごうを売却すると発表しました。売却後の西武池袋店の在り方が池袋地域の商業地図再編をもたらすためか、売却はまだのようです。また祖業であるイトーヨーカドーも、衣料(アパレル)から撤退すると数日前に発表しています。衣料はテナントを入れるようです。泉下に向かっている伊藤氏の胸中はいかほどでしょうか。祖業を大きく変えることは大きな衝撃波を起こします。グループ内、当該企業のイトーヨーカドー、取引先等の利害関係者への丁寧な説明が必要でしょう。
GMS業界は2強の争いとなっています。1つはイトーヨーカドー、もう1つはイオン(イオンリテール)です。両グループの売上高は肉薄していますが、利益額は圧倒的にセブン&アイが多いのが事実です。このイオンの前身はジャスコです。ジャスコは三重県に地盤があった岡田屋と兵庫県のフタギ、北大阪のシロの三社が昭和40年代半ばに対等合併してできました。
驚くことにこのジャスコの創業期に、伊藤雅俊氏が監査役で経営に参画していたらしいのです。イオン創業者の岡田卓也氏が語っているので本当なのでしょう。当時のGMSの勢力地図では、全国に進出していたタイエーを除き、各社は首都圏や関西圏等一定エリアで規模拡大を目指していました。ジャスコは関西・近畿圏を主商圏に、イトーヨーカドーは関東圏を主商圏にしていたので、両社は競合関係にはなかったのですね。GMS拡大期に競業の域をこえて切磋琢磨していたことが伺えます。
このように一時代を築いた創業者達ですが、自然の法則にしたがって寿命を終える時期になってきました。後を継いだ経営者達は巨大化したグルーフの舵取りをどのようにしていくのでしょうか。とても興味深いものです。