白川日銀前総裁が国際通貨基金(IMF)の季刊誌へ投稿した論文が少し波紋を呼びそうな気がします。白川氏は今年4月8日に任期が終了する黒田日銀総裁が主唱してきた物価上昇率2%目標に異をとなえています。これに対応するリフレ策、大胆な金融緩和政策も暗に批判した内容となっているようです。
今年1月の消費者物価上昇率は1981年9月以来、41年4か月ぶりの高い水準である4.2%でした。黒田日銀総裁が目標としていた2%水準を安定的(?)に超えた上昇率が数か月にわたっています。昨年は米国や欧州との金利格差を背景に円安が加速しました。今年になって多少落ち着いてきたとは言え、まだ対ドル135円を軸とした攻防が続いています。投資筋による上下変動はあるでしようが、各国政府の経済政策や国内経済の基調・潮流が為替市場への圧力要因となっています。
大幅な賃金引上げが実行されれば国内市場が膨らみ、結果として日本経済は上昇気流に乗れます。先の白川論文では、日本企業は日本の硬直的な労働慣行に影響を受けて、大胆な賃金引上げを躊躇させてきたと主張しています。この主張には私は異を唱えたいと思いますが、大幅な賃金引上げをしてこなったのは歴史の事実です。別の観点からは日本の労働組合は何をしてきたのかと大声を出したいところです。
今日(3月3日)の日本経済新聞には、日本企業の海外投資額は多いものの、海外企業からの日本国内への投資は極めて少ないとの記事が掲載されていました。国内市場が停滞しているから、日本企業は国内向けの投資をせずに、海外投資を積極的に進めます。停滞する日本市場を海外企業はしっかりとみて、日本への投資を躊躇します。投資しても儲からないからです。「国破れて山河在り」ではないですが、「大企業儲けて、日本経済衰退す」といった状況です。
国会で審議されていますが、黒田総裁に替わって就任する植田和男氏、副総裁に就任する永見野良三氏と内田真一氏、この3名は就任と同時に難題を背負うことになります。私は利上げは正しいと思うのですが、株式市場や為替市場が大混乱にならないようソウトランディングを望みたいものです。