· 

貿易収支20兆円弱の赤字の衝撃

 日本国の令和4年1月から12月までの一年間の貿易赤字が、19兆9713億円となったようです。新聞等の報道では19.9兆円の赤字としていますが、20兆円と表現した方が良い数字です。過去最高の赤字額です。これまでの最大の赤字額は平成26年(2014年)の12兆8160円でした。政府の発表の仕方は、貿易赤字急拡大の衝撃を緩和しようとする意図がみて取れます。

 その理由は何といっても急激な円安です。もう1つの要因は資源高でしょう。昨年の対ドル円相場の平均は131円52銭だったそうです。原油だけに論点を絞ると、昨年のドル建て価格の上昇率は47.6%でしたが、円建てでは76.5%も上がりました。再生可能エネルギーへの転換、供給増への取組みを全国民的スケールで展開してこなかったツケが、原油価格の高騰によって一挙に噴き出してきました。

 原油価格は今年も上昇気配を示しています。WTOによれば今年の世界各国の経済成長率は昨年を下回ると予想しています。欧米諸国はインフレ注視の中で政策金利を引き上げていますが、これが経済活動へのブレーキとなります。隣国中国のコロナ政策が劇的に変化したものの、行政や民間の負債(借金)急増や失業率上昇等の負の影響を受けて、習政権の目標経済成長率を達成できる可能性は低いとWTOは推察しています。

 このような状況を踏まえて原油算出国は原油の増産をすることなく、供給量を絞り込苦でいるようです。また原油増産せずの意思決定の背景には、SDGSによる化石燃料依存度が将来的に低下することへの備えの意味もあります。日銀の政策金利の変更があるかどうかは不明ですが、仮になしとすれば、円相場は昨年の平均値131円を中心とした値動きになるでしょう。ということは、原油購入による国富流出は今年も続くということです。

 私が小学校~高校の時代、日本は加工貿易の国だと教わりました。しかしかつての外貨稼ぎ頭であった電気電子機器産業は赤字転落目前です。韓国、台湾、中国等の諸外国との産業競争に負けた結果です。鉄鋼、化学製品も同様です。30年前と比較して貿易黒字額を伸ばしているのは一般機械と自動車です。しかしこの二つの産業も将来に黄信号が灯り始めています。

 政府の発表では経常収支は11.4兆円の黒字だったとか(1月~11月)。貿易収支の赤字を資本収支の黒字でカバーしているのです。資本収支は海外の子会社からの配当などが主体です。かつて貿易黒字大国であった時代に海外に積極的に投資していたことが資本収支の黒字を生んでいます。しかしこの黒字は国内に還流していません。海外子会社で再投資しているからです。

 日本国の経済が復活にするにはストック(資産=資本)を増やさないといけません。フロー(損益計算書)だけの思考で事業を行っていくと先細りです。経営者の皆さん!、積極的に設備投資をしましょうよ。でないと日本経済は二流、三流への坂道を転げ落ちていきますよ!