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ユニクロ、賃金最大4割引上げをどう読み取るか

 国内外でユニクロやGUなどを展開する衣料品販売最大手のファーストリテイリングが、賃金の大幅アップを発表しました。今年3月から国内の社員の賃金を最大40%引き上げるとしました。新入社員の初任給は25万5千円から30万円へと大幅にUPします。その引上げ率は17.6%です。このニュースをどの様に理解すればよいでしょうか。

 ユニクロの店舗数は国内を1(809店舗)とすると国外が2(1585店舗)の割合となっています(2022年8月期)。売上高順位は世界第3位で上位2社はザラ(スペイン)とH&M(スウェーデン)です。最近では中国発新興企業でシンガポールに拠点を置くシーインという会社も脅威となってきました。シーインは大手3社よりも低価格でかつ一日に数千品の新作を出し続けているというのです。本当???、と疑いたくなります。

 ユニクロは海外店の積極的な展開を行うに当って優秀に人財を集めました。その切り札はやはり賃金でしょう。日本の人財市場と違って、海外では自分の能力を高く買ってもらえる会社に就職をします。経験をつみ実力を蓄えれば、他社から転籍のオフォーが来ます。「この会社よりも高く自分を評価してくれている」となれば即座に退社します。優秀な人財の引き抜きは日常茶飯事なのです。

 ユニクロはこのような人財獲得競争に勝たないといけません。当然に高い賃金を提示します。その帰結として日本国内の社員との賃金格差が拡大していったようです。国内では高い賃金と目されても、海外では低い賃金だとしたら、海外赴任を躊躇する国内社員も出てくるかもしれません。

 その結果が最大4割の賃金引上げです。このニュースは衝撃を持って各界に伝わっています。ユニクロに関係する産業界や各社はその衝撃の余波を、直接又は間接の別を問わずに受けているはずです。そして関係のない業界や企業にとっても、今春の賃金引上げ方針に大小の影響を与えることは十分に予想されます。岸田総理は物価上昇率以上の賃金引上げを暗に要請し、経団連首脳は物価上昇率を考慮した賃金引上げを加盟各社に要請しています。これらの方針に従ったとしても賃金引上げ率は5%程度になるでしょうか。この5%を目安とすれば、最大4割という数字は「正気なのか?!」の声も聞こえてきそうです。

 ユニクロは海外での厳しい競争に勝とうと考え、国内企業は国内で競争している同業他社に勝とうとしている。競争の視点が全く違うのです! この内向き志向が日本経済をダメにしてしまったという事実を経済界のトップリーダー達は今一度考え直す時期になっているのではないでしようか。