企業が金融機関から融資を受ける際に、事業行き詰まりによる焦げ付きに対応する為に、金融機関は色々な手立てを講じています。その1つが経営者保証です。この経営者保証に係る制度が来年(令和5年)3月以降、大きく変わる可能性が出てきました。
日本経済新聞12月23日付朝刊に、見出しが【「経営者保証」来年から不要】【新興向け融資に新制度~3月開始 保証料率0.2%上乗せ~】とする記事が掲載されていました。経産省と財務省、金融庁が連名で政府系と民間の金融機関、そして信用保証協会宛に要請文を出すようです。新興企業とは創業5年未満の企業です。創業後5年未満の企業は、ビジネスアイデアは斬新でも事業として回っていくのか不安です。よって融資する金融機関等は最悪の場合を考えて、経営者に貸付債務に対する保証をお願いしています。この経営者保証が重荷になって、創業を諦めている起業人も多いのではないでしょうか。また十分な融資が受けられず、それが起因となって資金繰りに苦しんでいる起業人もおられると推察します。
令和5年3月からは無担保、経営者保証なしで3500万円までの融資が可能とするようです。但し焦付きリスクは常にあることから、信用保証協会への保証率を0.2%上乗せするようです。それでも倒産する企業は発生するでしょう。信用保証協会は経営者保証を求めないのですから、当然に回収不能額は膨らみます。ということで、政府は補正予算で120億円を計上したと記事にはありました。
創業後5年を経過した企業に対する経営者保証がそのまま残っては、元の木阿弥のそしりは拭いきれません。そこで政府は来年4月から、民間金融機関に保証の必要性の説明義務を課すようです。令和5年9月期以降は金融庁への報告が必要となるようです。金融行政の監督官庁である金融庁への報告があるということは、金融機関に対して相当な心理的圧力が掛かるのではないでしょうか。業績が悪く回復の兆しがない企業は経営者保証を安易に外すことはしないでしょう。これは客観的な合理性はありそうです。ただし、どのような説明をして経営者に納得してもらったかが、金融庁の調査項目となるのは間違いないでしょう。
このように、会社経営において相当程度必要となる金融機関からの借入に当って、経営者が難儀してきた経営者保証制度が大きく変わることは喜ばしいことだと思います。経営が比較的安定している企業から、経営者保証を外して欲しいという要請を取引金融機関に寄せられることが想定されます。私達中小企業診断士もそのお手伝いをする機会が増えるかもしれません。