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後手に回るよりは先手必勝

 円安が加速してきました。140円台に突入です。先週土曜日の夜にTVを観ていましたら、海外旅行をしてきた人達がため息交じりに円安の窮境を訴えていました。「海外旅行するほどに余裕がある人達の話なんて...」と思ってはいけません。円安が日本国の国際的な地位を脅かしていることに重大な関心を持たないといけません。

 ある人は東南アジアのタイに旅行したと言っていました。各国通貨の本当の実力を計るには、名目の為替相場を見るのではなく、購買力平価に置き換えてみると分かり易いです。良く使われるのが世界各国にあるマクドナルドのハンバーガー。例えばチーズバーガー一個が幾らで買えるのかで、通貨の実力を計るのです。その旅行者は言っていました。「かつては日本のハンバーガーの方が高かったのが、今回の旅行でびっくりしました。タイの方がかなり高くなっていたんです」。

 大きな原因の1つは、日本では仕入等原価の上昇を販売価格に転嫁できていないということです。これは逆説的に言えば物価が上昇していないということ。物価が上昇すれば実質賃金が下がりますので、賃金引き上げへの圧力が生じます。30年来も物価が上昇しないデフレが続いた日本では、当然の如く賃金引上げが行われてきませんでした。また行われても低位な賃上げ率にとどまっていました。

 その一方で各国は物価が継続的に上昇し、また賃金もアップしてきました。これは長期的には名目上のGDPアップと連動します。最初は名目上の数値であっても、それが固定化すると実質的な実態経済へと変容していきます。GDPの規模は為替相場に影響を与えるファンダメンタルズですから、日本円の相対的価値は低下する一方です。

 なお喜ばしいことがあります。日本円が安くなっているので、コロナが沈静化した後はインバンド需要が爆発すると考えられます。先述のタイを旅行した日本人は、「会う人みんなが日本に行きたがっている」と言っていました。国内旅行よりも日本に行く方が結果的に安くつくのですから当然です。日本は他国に比べて比較的治安も安定しています。2000年近くの有史の歴史資産があり、観光名所・史跡が豊富です。

 岸田政権はこの円安をインバインド需要の急拡大へと大いに利用して欲しいものです。そのためには、入国制限の大幅な緩和が必要なのですが...。