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対ドルで140円、さらには150円も視界入り

 円安が止まりません。昨日は一時的にしろ139円台に突入したようです。もう140円台になることは確実です。いや150円になってもおかしくはありません。日本の貿易収支が悪化しています。貿易収支は既に赤字です。サービス収支も赤字でしょう。これら赤字を利息収入等資本収支の黒字が埋めてきたという流れですが、もはやこのパターンは崩れてきました。この状態が続くと海外から食料を購入する資金にも欠くようになりそうです。

 資本収支の黒字は貿易黒字が積み上がった1990年代までの過去の遺産です。貿易黒字の穴埋めのために、米国等諸外国へ工場の移転や子会社設立等を積極的に行ってきました。進出国での経営成績を本国である日本へ送金することで、資本収支が黒字となっています。過去の遺産で今を暮らす(しのぐ)というのであれば、喩えは悪いことを承知で言うと、不良息子や娘が親から相続した遺産でその日暮らしをしているのと同じです。このような状態が長続きしないことは分かっているはずです。

 円安効果(?)もあって企業収益は上昇し、令和3年度の税収は過去最高の67兆円強となったようです。過去の最高値、令和2年度の60兆8千億円を6兆2千億円上回りました。内訳では法人税が2兆4千億円、所得税が2兆1千億円、消費税が9千億円の増収となっているようです。

 円安効果が会社業績にプラスに働いたとしても、閾値(限界値・頂点)が必ずあるはずです。青天井でプラスに働くという楽観的見通しは禁物です。130円から150円までの円安が継続すれば、内需型企業は価格引上げ圧力を強めることになります。これは個人消費に対し押下げ要因として働きます。結果、法人税収は増加したとしても、消費税は減少することもなりかねません。

 米国の6月の消費者物価は9.1%の上昇です。FRBが今年になって数回の利上げをしてもなお、物価上昇をくい止めることができていません。カナダ中銀は1%、フィリピンも0.75%の利上げを決定したようです。各国の中央銀行の大勢は金利引上げに動いています。なのに日本銀行は金融緩和の継続を意思決定してます。各国との金利差は益々拡大する一方です。

 良いと決断した政策・方針を長く実行してきた間に、その前提条件が変化することがあります。「脱皮しない蛇は死ぬ」と言います。環境変化に対応できないままでは、自然に体力は失われていきます。ある時点からは元通りに復元(復活)するという体力すらなくなるのです。