今日(5/13)付の日本経済新聞朝刊に面白い記事が掲載されていました。[厚生年金義務 業種を拡大]とあり、[個人事業所、旅館や飲食追加検討][待遇改善で人手確保]とサブタイトルが続きます。厚生労働省が今年夏から、社会保険の加入事業所の要件緩和に向けて検討を始めるという記事です。
株式会社等法人は社会保険に強制加入させられます。経営者は加入したくないとしても、加入義務があるのです。法人以外に個人で事業を営んでいる方が多数おられます。日本で事業を経営している企業は約400万者あると言われています。法人企業は180万者とされていますので、残り220万者は個人事業主なのです。
社会保険に加入すると使用者と従業員とが折半して保険料を納めなければなりません。これは使用者と従業員双方にとって負担に感じてしまう可能性があります。会社が「負担に感じる」というのは理解できそうですが、従業員が「負担と思う」のには違和感を感じます。理由はこうです。「厚生年金保険料を納めても将来貰えるかは分からない。今どれくらい貰えるのか、手取り額の方が関心事である」。
法令で個人事業主でも従業員数が5人以上いると強制的に加入させられる業種が16定められています。この16業種以外は特定の手続を経たときに任意適用事業所として社会保険に加入できるという仕組みです。
今年10月からは士業が強制適用事業所に追加されます。士業とは社会保険労務士、行政書士、税理士、弁護士等を言います。士業別に法律が定められており、業務独占や名称独占が保証されています。また弁護士会等の会員組織に入会しないと事業開始ができないという縛りもあります。
これら士業は原則として個人(自然人)に資格が付与されます。最近は法人成も許されるようになりましたが、法人の役員は士業資格者でないといけないのです。士業は個人事業主が過半であるものの、経済社会における役割等を鑑みて、今年(令和4年)10月から強制適用事業者となるのです。
強制適用事業以外の事業を営んでいる個人事業者は、社会保険に加入義務がありません。よって社会保険が整備されていないことを理由に入社をためらっている就職希望者が多数いるとも考えられます。中小・零細企業では人材不足が深刻です。その一因に社会保険制度の有無があるとすれば、国も重い腰を上げざるを得なくなります。
厚労省が考えている対象事業は農業や漁業等の一次産業、飲食や宿泊等のサービス業を中心に考えているようです。大分県は”おんせん県おおいた”を標榜しています。別府市では温泉を軸に宿泊や飲食等の事業が山の裾野のように広がっています。仮に、飲食業や宿泊業が社会保険の強制適用事業となれば、従業員数5人以上を使用する企業では、人手不足解消の契機になるのではと期待されます。厚労省は審議会等での検討を短期間に終わらせて、新しい制度の発足に全力集中してほしいものです。