円安が止まりません。1ドル125円を超えて126~127円へ突入しています。日銀の黒田総裁は「これ以上の円安は望まない」と口先介入をしましたが、マーケットは反応しませんでした。今後も円安傾向を強めていくのは確かでしょう。
ある一定の効果を期待したいのであれば、抽象的な介入ではなく、実質的な介入が必要です。私は金融政策の専門家ではないので、どのような介入が実質的かつ具体的な介入なのかは分かりません。しかし市場が明らかに反応するのが、実質的・具体的な介入だと思うのです。
その市場は生身の人間ではなくアルゴリズム、AIが主要プレイヤーだと認識しなければなりません。アルゴリズム、AIが日銀の介入に即座に反応してこそ効果的な介入と言えると思うのです。国の財政が危機的な状況に陥っている現在、財政政策で為替相場を円高へ誘導することはできません。金融政策が大きなカギを握っていることは、誰が見ても同じ結論となるに違いありません。
ある重要施策を変更するとなければ、成果が得られると共に副作用が発生します。この副作用に耐えられるかが施策変更決定への要諦となりそうです。副作用を恐れていては、絶対に前に進むことはできません。何も手を打たずに静観することは円安に拍車をかけることになります。
今年の賃上げはいかほどだったでしょうか。仮に1万円アップしたとしましょう。社会保険料や所得税等も必然的に上がりますので、可処分所得は幾分下がることになります。控除率を30%とすれば、賃上げ1万円により可処分所得は7000円増えたことになります。前年の可処分所得が200,000円だったとすると今年は207,000円となり3.5%のアップとなります。
ここで少し強引ですが、円安進行がそのまま消費者物価に影響を与えると仮定してみましょう。1年前の為替は110円を攻防とした動きを見せていました。それが今年は127円ですから17円、15.5%も下落したことになります。ここで今年の可処分所得207,000円に戻ってみましょう。
207,000円を下落率15.5%で除すると179,220円(207,000÷1.155)となります。円安進行を反映して、実質可処分所得が20,780円(200,000円-179,220円)も下がってしまいました。賃金引上げ効果は台無しです。円安進行が全て消費者物価に行き着かないとしても、最近の食料品価格の値上げの勢いをみるとある程度は店頭価格の引上げに影響することは確かです。
更に可処分所得の実質的な引下げは「買いたいものが買えない」ということになりますので、消費行動が消極的になっていくことでしょう。その結果はGDPの伸び率マイナス化へ繋がり、経済規模の縮小を招きます。そして、税収減となり行政の諸施策実行の範囲幅が狭くなっていくに違いありません。
こうして考えると円安の認容は日本国の将来を危うくする可能性が高いのです。黒田日銀が円高へ誘導する具体的な施策を早く打ち出すことを期待しているのは私だけでしょうか?