ある会社を訪ねたとします。そこでは100名程の”従業員”が働いているのを貴方は目にします。この光景は、20数年前であれば全ての”従業員”は会社と雇用契約を結んでいる労働者であったに違いありません。ただし雇用身分が「正社員」「嘱託社員」「パートタイマーやアルバイト」という違いがあったにすぎません。
しかし今は「業務委託」や「派遣社員」、「下請・孫請等の従業員」など多様な”雇用等”形態による人達が仕事に従事していることが多くなりました。という前提をもとに以下の投稿を読んで頂きたいと思います。特に経営者の皆さんには注意して戴きたいことが多く含まれています。
今日の日本経済新聞朝刊の2面に[「雇用なき労働」に法の保護]という標題で、興味深い記事が掲載されていました。吹き出しはまだ続きます。[「業務委託」でも使用者責任の和解や判決]、[就労の実態、司法が重視]。これら標題と副題を見て、ピーンときた人は人事労務問題に詳しい経営者だと言えそうです。
この記事の要約は次のとおりです。①A社は全国展開している冠婚葬祭業者で国内では最大規模(加入数263万口)。②実務の大半は業務委託先の代理店が行い、従業員総数は約6500人。③A社の正社員は50人。④B代理店の従業員が労働組合を結成したが、B代理店は廃業して従業員(組合員)は失業。⑤組合員はA社に使用者責任があるとして団体交渉を求めたがA社は拒否。拒否した理由は直接雇用ではなく、組合員らに労働者性はないというもの。⑥2021年に高等裁判所と中央労働委員会が組合員の主張を容認する和解を勧告。A社がこれを受諾した。
労働者性の捉え方は「労働基準法や労働契約法に準拠」と「労働組合法に準拠」の二つの大きな流れがあります。原告は労働組合を作っているために、高裁や中労委は労働者性の判断基準を労働基準法・労働契約法におくのではなく、労働組合法を当然に準拠法として採用したと考えられます。労働組合法に準拠した攻防になると、会社側が「業務委託だから」とか「外注だから」、「下請・孫請だから」、「一人親方だから」という会社側の主張は、かなりの割合で否定される確率が高くなります。労働組合法で規定される労働者性を否定するハードルは極めて高いのが現実です。
会社に「業務委託」「外注」「派遣社員」「下請・孫請等」などの人達が働いているときは、経営者は注意しなければなりません。日本経済新聞をとっている方はこの記事の熟読をお勧めします。他の全国紙にも掲載される可能性もあります。全国紙他、月刊誌でも類似の記事が掲載されたときは是非お読みください。もし、「?」「!」という点がございましたら、清成事務所までお尋ねください。