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対ドルの為替相場で円は125円に!

 私達の通貨、円の実力が急低下してきています。昨日は一時的にしろ約6年7か月振りに1ドル125円の円安水準となりました。今日(3/19)の16時16分現在の為替相場は123.58円となっています。ロシアのウクライナ侵攻前の、そして米国FRBの利上げ意向発言がある前までは、115円前後の攻防でした。そしてまた、ここ数年は105円から110円の間を揺れ動く状況が続いていたことを踏まえると、円の実力が急落している事実に嘆きたくもなります。

 OECD等諸外国と国力を比較する時の指標にGDPがよく使われます。仮に現在のGDPが日本円で550兆円だとしましょう。国際間の比較をする時には基軸通貨であるドルが利用されますし、EUの通貨であるユーロの出番もありそうです。ドル換算で日本のGDPを考えると110円の時はドル換算で5兆ドルとなります。これが125円だと4.4兆ドルとなり、見かけ上は12%も低くなってしまいます。

 コロナ禍の影響が軽微となり、経済活動が盛んになって5年後のGDPが600兆円になったとしても、対ドルで125円であれば4.8兆ドルしかなりません。円換算では9%成長(600兆円÷550兆円)なのに、ドル換算だと△4%成長(4.8兆ドル÷5兆ドル)となってしまいます。円では成長したと言える一方で、ドルではマイナス成長となる不思議な世界、それは為替の影響を受けるからです。

 円安は輸出企業にプラスとはいうものの、今は昔80円半ばという極端な円高時代から、順当な円安の時期を通り越して115円水準となった昨今でも、輸出金額が増えたものの物量が大きく伸びたという報告はありません。何故なら、製造業は国外に生産拠点を移転し、国内で製造した製品の輸出は長期的に減少してきたからです。

 その反対に、輸入物価の値上りが続くという負の影響の方が強くなってきました。1ドルの商品を105円で買えていたのが、今や125円支払わないと手に入らないのです。19%の値上がりです(125円÷105円)。極端な円安はやがて消費者物価の上昇を招くはずです。諸物価の急上昇はもう間近だと言えるでしょう。にも拘わらず、政府や日銀は何の手を打つ気配はありません。政府主導で円高誘導をはかるというのは問題がありますが、そんな悠長なことを言っておられる時代ではなくなりました。

 「輸入に頼る食料品の価格が上昇する」「食料の国際間調達で日本が敗北する」「国民生活が徐々に苦しくなる」「貧国世帯が更に増える」「企業が青色吐息になる」「日本経済の国際的地位の更なる下降が現実味を帯びてくる」「雇用が停滞し失業者が増える」。こんな状況はでは皆が不幸になってしまいます。

 政治や産業界、そして消費者団体等の全ての利害関係者が、大いにこの悪い円安傾向をくい止める対策について議論を重ね、対策の実行を行って欲しいものです。