企業物価指数が9.3%とオイルショック(1980年・昭和45年)以来の高い水準になったそうです。日本銀行が3月10日に発表した2月の企業物価指数の上昇率が、昨年同月から9.3%も上昇したというのです。企業物価指数は消費者物価指数とは別物ですが、前者が上昇すれば早晩、後者が上昇するだろうことは当然の結末です。ロシアのウクライナ侵攻等の地政学リスクが極大化している現在、令和4年度は消費者物価の上昇が顕著になるのではないかと推察されます。
1980年(昭和45年)12月の企業物価指数の上昇率は10.4%だったそうで、今年2月の上昇率はこれに次ぐ41年ぶりの上昇率となりました。企業物価上昇率と消費者物価上昇率の差が徐々に拡大しているようです。企業は必至の経営努力によって、企業物価上昇によるコスト増加に対し、製品販売価格(消費者物価)への安易な転嫁から避けてきました。しかしそろそろ限界に近づいてきたようです。
製品の原価構造を解析してみましょう。以下はあくまで仮定の話であり、現実は多少異なることを理解した上で本稿を読み進めて下さい。売上高が10000、売上原価が6500だったとします。原価率は65%で総利益は3500(総利益率35%)です。原価は大きく4つに分解できます。材料費、労務費、外注費、原価経費の4区分です。この4つの内訳が夫々3500、1000、500、1500だとします。
企業物価指数の上昇は材料費(3500)に大きく影響を与えます。計算を簡単する為に企業物価指数の上昇率を10%とすると材料費は3850となります。労務費は賃金や法定福利費等が含まれますが、昨今は賃金引上げ要求が労働界のみならず政府から出ています。よって3%の賃金引上げがなされたとしましょう。すると労務費は1030となります。
外注費は製品の製造工程を外部企業に委託することで発生します。外部取引先も材料費や労務費のUPという圧力を受けています。よって外注単価の引上げを要求してくる可能性が高まります。仮に5%のUPを会社が飲んだとすれば外注費は525となります。最後は製造原価です。無駄・無理・斑等のコスト削減にこの会社が必至に取り組んでも、電気料金等が上昇する影響を皆無とすることはできないでしょう。2%UPに留めることができたとすると製造原価は1530となります。
以上の試算によれば、製造原価は6500から6935(3850+1030+525+1530)となり、現在より435(6.7%)の上昇となります。原価率は69.35%、総利益率は30.65%となります。販売・一般管理費(営業経費)の大幅な縮減が達成できなければ、総利益の減少額はそのまま営業利益の減少とイコールとなってしまいます。
会社は営利事業体です。未来永劫に存続するには一定額以上の利益という栄養が必要です。利益が恒常的に減少したりまた低水準で推移すると、会社は徐々に体力が喪失していきます。これを避ける為には、合理的かつ客観的な根拠を元に、一定の負担を消費者に求めていくことになるでしょう。この動きは昨年から既に始まっています。再度指摘しておきます。今年令和4年度は消費者物価が顕著に上昇し始める年になることは間違いないと私は考えています。さて皆さん方はどのように考えていますか?