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「やさいバス」にみる新規ビジネスの発想の仕方

 新製品や新役務(サービス)の誕生に関しては多様なルートがあります。故スティーブ・ジョブズが発明!したスマートフォーンは、類似のアイデアや製品が世の中には全くありませんでした。「ないものを創り出した」という点で革命的でした。このスマホは2000年前後のスパコンの性能を遙かに超して、今や日常生活になくてはならないものへと成長しました。

 このような革命的なアイデアや製品を左端におくと、右端には「世の中にある製品やサービスとを組合わせて新たな製品やサービスを産み出す」というアプローチがあることにも気付きます。この「既にあるモノ同士を組合わせる」という発想は簡単なようで案外と難しいのです。老若男女の誰もが耳で聞き、目で見ており、実際に使用しているにも関わらず、「組合わせる」という発想は中々できないものなのです。

 定期購読している日経MJの3月2日付けに面白い記事を目にしました。400字程度の本当に短い記事です。[MV東海、「やさいバス」と連携]と標題にあります。MV東海とはイオングループのスーパーマーケットです。一時はSM業界で注目されたヤオハンが経営破綻した後にイオンが経営を引き継いだ会社です。当社が「やさいバス」と連携するというのです。「何だ?、やさいバスって」と記事を読んでみたのです。

 記事にはやさいバスとは静岡県牧之原市にある会社で、野菜販売の巡回バス「やさいバス」事業を行っているとあります。株式会社でありHPでは事業内容を次のように書いてあります。バス停に野菜集荷場を設置し、冷蔵トラックが時間を決めて巡回。農家はバス停に生産した野菜を持ち込み、飲食店はそこに出向いて野菜を仕入れる。割安な配送コストで新鮮な野菜を届けるサービスを提供。『野菜でつながる”おいしい”物流サービス』を展開する。」 会社名やサービス名を“野菜”とせずに“やさい”と平仮名にしている点にも経営者の経営感覚が発揮されています。

 「なるほど」と合点です。人を乗せるバスは停留所があります。時刻表に従って定期運航します。その停留所で乗客が乗り降りします。やさいバスは時刻表に従ってバス!を運行し、農家等が野菜等を持込みます(バスに乗り込みます)。次にバスは野菜等を乗せて別の停留所に移動し、そこで卸して買い物をしたいと待っていた乗客!に販売するという仕組みださうです。

 「よくぞ、こんなビジネスモデルを考えたもんだ」と感心しました。同じようなビジネスは既にあります。直接農家等から買い付け、自店で販売するか又小売店に卸すかというモデルです。同社はこれに加えてバスのように時刻表に従って拠点(停留所)間を運行するという付加価値を付けたのです。ちょっとした発想、アイデアでマーケットは「小さな違いだけど大きな違いがある」と認識します。この「小さいけど大きい」という価値にやさいバス株式会社は注目したのです。

 世の中にあるゴマンとある製品、役務、技術、ノウハウ、テクニック、アイデア、ビジネスモデル等々、今一度冷めた目で眺めてみたいものです。ひょっとすると「これって!、使えそうだ」と閃きが脳みそに走るかも知れませんよ。