コンビニ最大手のセブンイレブンを傘下に持つゼブン&アイホールディングスが、百貨店事業の売却に動いているというニュースが昨夜のTVで流れました。今朝(2/1)の日本経済新聞でも一面に掲載されていました。何故、セブン&アイは百貨店事業を売却するという経営判断をしたのでしょうか。その真意は不明ですが、本稿でこの決定について論考してみたいと思います。
会社は単一の事業を行っていると未来への存続という観点からは大きなリスクを抱えることになります。事業を1つしか展開していないと、事業環境が激変すると一挙に売上が減少し、結果として赤字拡大と資金ショートを起こしてしまいます。会社が安定成長するには、複数の事業を行うことが肝心です。複数の事業とは2つではなく、3つ以上がポイントとなります。4つ以上の多数の事業を行うのは良いのですが、「虻蜂取らず」ではいけません。多数ある事業の中で、会社の骨格をしっかりと支える中核事業を3つ!、持っていることがとても重要なのです。
話は余談になりますが、ユークリッド幾何学の世界では、三角形が一番安定していると聞いたことがあります。物の形が3角形だと外部から圧力を受けても動きません。一方一番不安定なのは円です。ころころ転がり不安定です。これを考えると、5から無限大の角数を持つ多角形は安定しないということが言えます。
だからこそ、会社経営では中核となる3つの事業を中心に動かし、その他の事業は次の中核事業を狙って必要な経営資源を投入し続けなければなりません。会社経営は3つの事業があれば、少なくとも多少の経営環境変化のリスクに対応できると言って過言ではありません。中核事業に経営資源の大部分を注ぐという意思決定が、会社を安定的に大きく成長させるのです。
ところで中核事業の定義付けは少々困難です。私見を述べてみます。売上高だけを論じると、全体の売上を100とした場合に概ね20%以上の比重を占める事業と言えそうです。売上が10%前後だと中核事業とは言えません。先ほど、会社は3つの事業が最低あれば良いと指摘しました。中核事業とは20%以上の比重を持つと定義しましたので、中核事業計では20%以上×3事業=60%以上の売上を占めることになります。ある事業が20%、別の事業が30%、40%だと合計で90%となります。このように売上高が全体の20%以上を占めるのが中核事業と定めると理解が早そうです。
セブン&アイの百貨店事業は西武とそごうの2系統あります。直近の決算では利益は赤字です。百貨店事業は同グループの中核事業ではないという経営判断を経営者がしたのでしょう。CVS事業が圧倒的な存在感を示す同グループは、売却資金でCVS事業を強靭化させたいようです。
さて、かつてセブンイレブンの親会社であったイトーヨーカドー(量販店)も赤字であり、低収益が慢性化しています。同グループがヨーカードーも将来は売却するのか、今後の動きに注目したいところです。創業者は高齢ですが存命です。創業者伊藤雅俊氏や中興の祖鈴木敏文氏の意向を無視してでも、ヨーカドーを切り捨てることができるか。その決断が出来るとすれば、同グループの歴史に名を遺す名経営者になれそうな気がします。