今年もあと1週間となりました。明日や明後日に強い寒波が日本列島を襲い、大分でも降雪がありそうです。ところで各メディアでは消費財メーカーや小売店等が販売価格のUPを報じています。昨日のNHKニュースではミスタードーナツ(ミスド)が来年3月に平均で10円値上げをすると報道していました。
今日の朝には、丸大食品が200品目以上のハム等で5%から15%、価格を引き上げるというニュースも流れました。他の大手2社、日本ハムと伊藤ハムも既に値上げを発表しています。ちょっと前には大手量販店のイオンが来年3月まではPBの値上げをしないという決定もしています。
今年の冬は平年より寒いとの予報があります。気象上の”寒波”は身体に直接的な影響を与えますが、食費支出増加に係る品々の値上げは家計に”寒波”が寄せてくるようです。天気の”寒波”は防寒服で装い、身を縮こませることで我慢できますが、家計を襲う”値上げ寒波”をどのように防御すれば良いのでしょうか。
とここまでは消費者目線での言及でしたが、ここからは売り手(メーカーや小売店等)の目線に沿って、「どうして値上げをしなければならないか」を考えてみることにします。会社の決算書の1つである損益計算書は売上等の収益と原価や販管費等の費用とを体系的に並べて、利益の額を明示する帳票となっています。原価や販管費等の費用は、会社が支出を統制できるか否かで”管理可能費”と”管理不能費”とに区分することができます。
”管理可能費”としては、広告宣伝費や販売促進費、接待交際費等が挙げられそうです。会社が「増やす」又は「減らす」という意思決定が支出額に大きく影響してきます。一方の”管理不能費”は公租公課、法定福利費など会社の意思決定とは別次元の世界で支出額が増減するものです。
この費用の中間として”半管理可能(又は不能)費”というものがありそうです。代表的なものは材料費や外注費でしょうか。材料費(仕入)は売上に直結しています。ある程度の材料量がなければ商品は作れません(販売できません)。材料費の仕入価格を押し下げようとすれば、仕入元から「この価格では販売できない」と通知され、会社は必要な量の仕入が出来なくなります。仕入に関しては売り手の方が強いパワーを持つのが一般的です。
今回のハム・ソーセージ等肉食大手3社の値上げやミスドの店頭販売価格引上げの元をただせば、この「仕入価格が高騰してきた」ということにつきます。原価のUPは最終的に利益の押下げとなります。大手各社の値上げはある意味では仕方ないと言えるでしょう。
しかしここからが問題です。消費者は直ぐに「分かりました」と納得するのではありません。「何で上げるのか」「うちの家計も苦しいのに」「各社が一斉に値上げするのは許せない」などの感情が湧き起ってきます。これらの負の感情は、数か月は続く可能性があります。その後は「仕方ない」という諦めに似た感情に促されて、値上げした商品を再び購入するようになります。しかし購入数量を落とすなどの防衛をしながらです。
メーカーや小売店等は値上げはやむを得ないとしても、「何故値上げするに至ったか」「値上げをしない為にどのような対策を講じてきたか」などを懇切丁寧に説明する義務があるでしょう。ネットや新聞等あらゆる機会をを通じて説明しなければなりません。その義務を放棄した会社には再びお客様が元通り戻ってくることはないのです。