今年も残すところ3週間余りとなってきました。今から28年ほど前ですが、私が会社員であったころ、12月は財布が膨らむ時期として嬉しい季節でした。月例賃金、年末調整で納め過ぎた所得税の還付、そして賞与の支給。この3つが一月に来るのですから。家庭を持つビジネスマンにとっては、年末年始で出費が多くなる時期に、少し多めのお金を持つことは大変嬉しいことだと思います。
家庭の懐状況を温かくする話題が最近目立つようになりました。全ての話題がYESとなりませんが、今回はこの懐状況を直撃するニュース、特に賃金引上げについて私見を論じてみたいと思います。
労働者一人当りの年収は長期低落傾向にあります。この背景には複雑な要因が絡み合っています。①正規労働者の割合が減って賃金の低い非正規労働者の割合が高まったこと。1人当り賃金は、分母を労働者数、分子を総賃金額として計算します。よって、分母の数が増える一方で、分子の増え方が緩慢だと当然に得られる解は下がっていきます。このジレンマに日本社会は陥ってしまいました。
②日本の産業構造が変化したこと。かつて花形輸出産業として電機産業やと半導体(電子)産業が脚光を浴びていました。これらの産業での賃金は比較的高ったのです。しかし、中国や韓国、東南アジア諸国の追い上げで、日本の輸出産業で世界に誇れるのは自動車しかなくなってしまいました。③IT、IOT、AIなど仕ビジネス環境の情報化が急速に進んだこと。それに追いついていけない労働者が離職したり、賃金の上昇率が低位水準に陥ってしまったのです。転職して賃金が上がる率は35%程度です。65%の再就職者は前職より給料が下がっているのです。
④最低賃金の引上げが安倍政権登場まで低い水準に維持されてきたこと。その結果、経営者は賃金上昇圧力を回避でき、経営改善を怠ってきました。⑤デフレ状態が続いてきたこと。その結果、賃金が上昇しなくても実質的な生活水準は変わらずにきたので、労働者や市民の声が国政や経済界へ届かなかった。
まあ、理由をあげればきりがないほど、労働者一人当り賃金が長期低落傾向にある原因は多数あります。年収が下がり続けるこの状況が更に続けば、日本の将来はどうなって行くのでしょうか。心配で心配でなりません。という訳ではありませんが、来年度に向けて政界や経済界、労働界等では賃金引上げに係る声が湧き起ってきました。賛成派、反対派入り乱れての乱戦状態です。
国民経済の観点から考えれば、GDPの60%強が個人消費です。民間の設備投資、政府支出、貿易・外需の3つが残り40%弱を占めています。個人消費のメーンは給与所得です。
会社経営者は率先して社員の給料アップに努めて欲しいものです。高い給与水準により社員の忠誠心UPと共に、高い品質と志を持った有能な社員を確保できると考えます。「卵が先か、鶏が先か」の議論を延々としていては、早晩会社はなくなっていくでしょう。賃金引上げを先にし、「何故、高い水準の賃金を出すのか」その理由を経営者は社員に何度も、機会ある度に説明していきましょう。経営者の熱い思いや理想を社員はしっかりと受け止めてくれるに違いありません。