総選挙が終わりました。予想に反して(?)自民党が少ない議席減と、大健闘した結果となりました。選挙結果を受けて日経平均株価も700円以上上昇し、経済界は政府が今後打ち出すだろう経済振興政策に関心が移っているようです。
ところで、野党の立憲民主党や日本共産党の不振をどのような総括をすれば良いのでしょうか。一方で、かなり苦戦するとされた国民民主党は議席を増やし、日本維新の会は4倍近い議席増を勝ち取りました。国民はバラ色のまたバラマキ施策にノーを突き付けたのでしょうか。是々非々の姿勢で与党と対峙する日本維新の会に現実的な対応を期待しているのかも知れません。国民民主党も中道系ですがどちらかと言えば右寄りの主張が多いことからも、現実的な対応を国民が望んでいるということは確かなようです。
さて、本日(11月2日)の日本経済新聞の一面に[競争なければ再生なし]という標題の記事が掲載されていました。この記事の末尾が少々気になりました。というのは、「日本の年間賃金データを購買力平価ベースでみると30年前から僅か4%しか増えていない」と記事にあるのです。
モノやサービスを購入するにはお金が必要です。給与所得を主とする家庭の年収が、仮に30年前に500万円だったところ、現在は520万円に過ぎないというのです。子育て家庭では教育費の負担が重いと思います。また今や社会的インフラとなっているスマホを使いこなすには、通信費等の負担も過重になります。こうして30年前に比較して増えた特定費目の支出額を、他の費目、例えば食費や被服費等の削減で対応しているのです。
他国の状況もこの記事では書かれています。米国では30年間で48%、OECD平均で33%と夫々増加しています。OECDの33%増は、30年前の給与所得500万円が665万円になったという勘定です。30年間で日本は20万円増、他国は165万円増ではいずれが豊かさを感じるでしょうか。論じることはないでしょう。そう、日本は給与所得の伸びが極めて低いことに大きな問題を抱えています。
給与所得は、大局的にみれば会社の経営成績からの分配です。会社の成果である利益は概ね次の3つに分配されます。①給与等への分配、②設備投資等成長投資、③内部留保、の3つです。①の分配で給与等と書きましたが、全てが給与・賞与等の社員への報酬に当てられるとは限りません。株主配当や役員報酬への分配もあります。②は大きな課題を抱えています。成長投資へ資金が活用されていないという事実があります。企業はもっと設備投資をするべきです。
③の内部留保の金額も大きく膨らんでいます。上場企業の当座資産は100兆円を越えているといいます。一部の政治家等から「預貯金への課税」の声が上がっています。法人税等を支払った後の預貯金に課税するのは、課税法定主義の主義からも大いに問題です。二重課税となるからです。しかし、このような声がくすぶるのは、「企業は儲けた利益を社員らの分配や企業成長の為に使っていない」という経営者姿勢への批判があるからです。
岸田首相は政権運営のテーマとして「新資本主義」を打ちあげました。どのような内容なのかはこれから肉付けされて、明確になっていくと思います。しかし、その基軸は「成長も分配も」という二律背反的なアクションを起こそうというものです。「成長と分配」という対立軸を競争ではなく、共創していかないと日本の未来はあり得ません。給与所得が30年間で僅か4%しか伸びていないという事実に、頭を抱えた私の素直な感想です。