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中国の不動産部門、GDPに占める割合が28.7%!

 読者の皆さんは、ビジネスに必要な情報はどこから仕入れていますか。APUの学長である出口治明さんは「ひと(との出会い)「本(多読)」「旅行(での発見)」の3つを挙げています。私は「人」との出会いは少々億劫ですが、「本」と「旅行」では新たな刺激を与えられて脳みそが活性化されます。

 さて「本」を「活字」と置き換えれば、毎日の新聞を読むというのも情報源としては大変有効です。特に日本経済新聞は、日本や世界の経済の大局的な動きを知る上で大いに参考になります。今日(10/21)の同紙に[中国「共同豊裕」行き着く先は]というコラムが掲載されていました。別の頁では不動産大手の恒大のデフォルト懸念を伝えていました。このコラムを読んで、「日本経済は来年以降も浮上することは厳しいかな」と思ってしまいました。その理由を綴ってみます。

 そのコラムでは、中国のGDPに占める不動産部門の割合が2016年時点で28.7%を占めると書いてありまたした。米国はどうでしょうか。2017年時点で17.3%の比率です。中国では不動産投資、特にマンション建設が盛んだと言われています。マンション購入は「居住」目的と「利殖(投資)」目的の大きく二つに分かれます。ここで驚愕の数値をコラムから拾ってみます。

 居住目的であれば、購入するマンションは”1軒目”となります。”2軒目”以降は利殖・投資目的での購入であることは明白です。2013年の調査では、1軒目58%、2軒目34%、3件目以上8%でした。それが2018年には、1軒目13%、2軒目66%、3軒目以降22%と大きく変動しました。深圳や北京等では年収の40倍のマンションもあるそうです。日本のバブル時代でも年収倍率は20倍を超えていませんでした。年収40倍ともなれば、バブルがはじければマンション所有者は全員破産へ追い込まれるに違いありません。

 ここで考えました。「恒大等の不動産大手が債務不履行で事業が行き詰まり、不動産投資が仮に10%減少したらどうなるか」と。GDPに占める不動産部門は28.7%、他の部門が71.3%です。他の条件を変えずに検討しています。不動産部門10%ダウンだと28.7%×0.9=25.83%。他の部門の成長を仮に5%とすると、71.3%×1.05=74.86%。両者の合計は25.83%+74.86%=100.69%となります。これは「成長していない」ということです。他の部門5%成長では、不動産部門の極度の不振を補えないのです。

 次に他の部門の成長率を10%としてみます。他の部門は71.3%×1.1=78.43%となりますので、合計は104.26%(25.83%+78.43%)となり、最近の中国経済の成長率5%台にも及びません。このように、不動産部門主導で成長してきた中国経済が、今後の安定的な成長を危うくする地雷原であることが明確になったのです。

 中国経済は必ず減速します。来年以降の成長率は5%を割っていくでしょう。もし外需依存度を更に強めれば米国等諸外国との貿易摩擦が熾烈となります。個人消費等内需の拡大を中国政府が要求すれば、外国への渡航や消費の禁止又は自粛要請、共産党主導で国産品購入促進のキャンペーンが繰り出されるでしょう。

 その時、生産財や消費財を含めて中国市場への依存率が高まっている日本経済は、大きく減速するに違いありません。日本政府はコロナ禍でしぼんだ内需の振興策を強烈に打ち出すべきです。GO-TOキャンペーンの復活も良い手です。時間は余裕ありません。リーマン・ショック時のように「米国での話」という枠内に収まり切れません。「中国がくしゃみをすれば、日本は風邪をひく」という経済になってしまっているのですから。