家電大手のパナソニックが苦戦しています。25年ぶりに売上高が7兆円を割ったとか。ソニーが売上高9兆円、当期純利益が1.2兆円となったことと比較すると、家電業界の東西の雄に明暗がはっきりしました。
パナソニックは経営の神様と呼ばれた故松下幸之助が創業した会社です。10年くらい前になりますか、創業以来の松下電器産業からパナソニックへと社名を変更しました。そして、幸之助翁の義弟が創業した三洋電機や子会社の松下電工と統合し、規模的には大きくなったはず。にも拘わらず、単純計算した売上高は三社統合後に減少傾向を示していました。
ソニーは戦後に創業した会社で井深大や盛田昭夫という優れた経営者のもと、小型化する技術をバックにウォークマンで大成功を収めるなどしてきました。しかし、ソニーも家電やPC分野で苦戦を強いられ、一時は米国の投資家から事業の再編成(家電切り離し)を求められていました。そのソニーが、純利益1兆円超を達成したのです。
両社の決算が明暗を分けた分岐点はどこにあったのでしょうか。研究する余地がありそうです。ソニーはPC事業(バイオ・VAIO)を分離し独立させました。スマホ等のモバイル端末が市場を席捲して中で、ソニーのPC事業は慢性的な赤字体質に陥っていました。ソニーは家電や電子製品の製造販売と同時に、米国のエンタメ事業を買収し、映画や音楽分野で一定の地位を確保していました。
このエンタメ分野は、サブスクなどの課金制度を上手く活用すれば宝の山となります。ソニーは無形な財産、知的財産を活用して利益の押上を行ったのです。ソニーは大胆に事業再編成に挑戦し、成功しました。
一方のパナソニックはエンタメやデジタルに係る事業分野は保有していないようです。形ある製品にこだわっています。かつて薄型TV市場が伸張しているときに、当社は液晶ではなくプラズマにこだわりました。液晶の優位が明確になったとき、プラズマに投資した多額の資金の回収にこだわり続けて、傷口を大きくしてしまいました。
EVが自動車市場で急伸しています。EVに搭載するリチウム電池では大きなシェアーをパナソニックは得ているようですが、利益は十分ではないようです。イーロン・マスク率いるEV大手テスラ相手に苦戦を強いられているようです。
このように、パニソニックは事業再編成に成功していません。意思決定が優柔不断だったのです。市場の先を診る能力が欠落していたに違いありません。今の事業分野に安住することなく、先を診る力を養って、先手必勝で事業再構築に取り組む。パナソニックとソニーの事例から読み取れる経験則と言えるのではないでしょうか。