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43連休を全従業員へ、給料は全額支給で

 従業員への休みの与えたについて考えさせられる新聞記事がありました。日経MJの3月29日付けで、見出しは[前向き「43連休」で意識改革]となっていました。それもアルバイトを含む150人強の全従業員全員に1月17日(日)から2月28日(日)までの連続43日間、公休としての休みを与えたというのです。

 その会社は山口県宇部市にある飲食店9店舗を営業しているH&Nという会社。H&N!?、世界的なファーストファッション小売業H&Mに模した社名です。「ふざけた名前の会社だな?」と思いつつ、この記事を読んでいくと、経営者のしたたかな経営戦略が浮かび上がってきました。

 1月8日からの緊急事態宣言が10都府県で発出し、その影響は宣言が発出されていない他の37道県にも及んでいました。昨年末のGo-Toトラベルやイートの停止、そして緊急事態宣言により全国の飲食店は大きな影響を受けています。地方都市である山口県宇部市にある当社でも同様だったようです。

 そこで経営者が打った手は、「全従業員を給料は全額支給しつつ43連休でリフレッシュ」という予想外の全店休業宣言だったのです。当社のHPを検索しました。社長の中西章氏が43連休の狙いを綴っています。以下はメッセージの一部です。

 「1月17日(日)~2月28日(日)(予定)の期間、全店舗休みます。取引先業者さまや常連さまには大変心苦しいですが、1か月半の長い冬休みを取ることにしました。こんな長い休みを取れることは貴重だよ。思いっきり楽しんでください。サーフィンをするもよし、釣りをするもよし、家族サービスをするもよし、パソコンをいじるもよし、車をいじるもよし、ゲームの腕を上げるのもよし、ソロキャンプを極めるもよし、新しい趣味を見つけるもよし(勝手に営業しちゃだめよ)」

 「禍福は糾える縄の如し」と言います。経営者にとっても、お客様が来ず、売上が上がらず、現金が流出し続ける。これでは危機感を覚えます。しかし、悪いこと(や良い事)は未来永劫に続くことはないと考え、また一喜一憂することなく長い目で現実を捉えることが大事だと考えれば、陽転思考で「リスクはチャンスでもある」と考えることができるようになります。

 当社の中西社長は「43連休なんてこれからの職業人生では決してないだろう。人生を楽しむ機会に使って欲しい」とメッセージを寄せ、「サーフィン」「釣り」「家族サービス」「パソコン熱中」「ゲーム三昧」「ソロキャンプ」「新しい趣味発見」など、43連休は自分発見の為に使うことを提案しています。

 連休明けの3月1日以降の数字はまずまずと言います。その理由は何となくわかります。お客様目線と従業員目線の2方向から分析してみましょう。

 最初にお客様目線。商圏内の生活者は「43連休を取らせた会社ってどんな会社なのか」と興味をもったことでしょう。ネットで話題になったでしょうし、新聞等メディアでも記事として発信されたに違いありません。こうした情報を耳にし、目にした生活者は、H&Nに対して好印象をもったに違いありません。ブランド価値や認知度が上がったことは確実です。

 次に、従業員目線でも良い影響を受けたに違いありません。最近は余り話題にならなくなった言葉にブラック企業があります。反対はホワイト企業です。ブラック企業の典型は従業員に優しくないというものです。優しいどころか、法会違反を平気で犯すなど、従業員を従業員と思わない暴言や暴挙に出ることは日常茶判事です。当社のような会社で働く従業員のモチベーションはぐ~ンと上がったに違いありません。それも大多数のアルバイト従業員の士気は多いに上がったことでしょう。

 このように考えると、経営者が市場(お客様)と従業員との両面で喜んでもらい、かつ事業活動も好影響を与えるアクションは多様にあるのと思うのです。社長は”のうりょく”を使わないといけません。その”のうりょく”とは”悩力”のことです。能力や脳力(地頭力)ではありません。「悩む」という”のうりょく”を使って欲しいのです。