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4月から70歳までの継続雇用が義務化

 今日(2月5日)の日本経済新聞に[シニア人材も成果主義 カシオ副業解禁・TIS給与変動]という見出しで記事が掲載されていました。コロナ禍で働き方改革の行方も覚束なくなってきましたが、注目すべき法律の改正施行が今年4月1日にあります。それは改正高年齢者雇用安定法の施行です。

 一般的な企業では60歳で定年となり、その後は本人が希望すれば、解雇事由に該当しない限り65歳までの雇用が義務化されています。この義務は努力義務ではなく強制義務です。よって、企業は「定年の廃止」「65歳までの定年延長」「65歳までの継続雇用ができる制度の導入」などの対策を講じなくてはなりません。改正法の施行により、今年4月1日からは、努力義務ではありますが、70歳までの継続雇用を可能とする措置を企業が取らざるをえなくなります。

 70歳までの継続雇用が努力義務とはいえ、企業がこれを完全に無視してしまうと、高齢者雇用に優しくないブラック企業としてSNSに投稿される可能性もあります。なお、企業は本人が希望しても対象者を限定することができます。経営者は「コロナ禍で業績が低迷し、社員の雇用維持も困難になっているのに」とぼやきも出てくるかもしれません。しかし、「法律は今後も強化されていくだろうから、65歳超70歳までの雇用が可能か、この機会に仕事のやり方を見直ししてみよう」と前向きに捉えたいものです。

 ところで、70歳までの継続雇用を行うに当って、国は面白い制度を創案しました。「①定年の廃止」「②70歳までの定年延長」「③70歳までの継続雇用ができる制度の導入」までは、65歳までの継続雇用義務化とほぼ同じです。この3つに加えて、「④業務委託制度の導入」「⑤社会貢献事業(有料)に従事できる制度」と、新たに2つの制度を創案しました。④と⑤は雇用ではなく非雇用というスタイルです。非雇用ですから、従業員は会社から退職することになります。いわば創業支援等の措置と言えるでしょう。

 会社は④と⑤に係る措置を会社は作成し、従業員の過半数を代表する者等の同意を得た上で、この計画を従業員に周知しなければなりません。創業支援等措置を記載する実施計画には、12項目が法令により作成するよう求められています。

 ④は会社と退職する従業員との間で業務委託契約を締結します。業務委託ですから、原則として労働法の適用はありません。とは言っても、受発注単価や対価の支払い日、不当な修正要求、過重な就労時間などに会社は格別な配慮をすべきであることは当然です。

 ⑤は前提条件があります。会社が「会社が自ら実施する社会貢献活動」「会社が委託、出資等をする団体が行う社会貢献活動」に、退職者が有償で従事するというものです。会社と社会貢献活動との間に密接な関係がなければなりません。この点が重要です。「退職者が有償で社会貢献活動に従事している」だけではダメなのです。

 話は戻り、カシオの[シニア人材も成果主義]の意味を考えてみましょう。高齢者雇用についてこれまでは、「お国が定めた法律だから守らないといけない」的な姿勢があったかも知れません。しかし、高齢者は体力は衰えても、判断能力は若手社員よりも高いでしょうし、経験値も豊富で業務遂行能力も一定水準を保っているでしょう。こうして考えると高齢者は”隠れた人財”なのです。

 人財を有効活用しないのは実に勿体ない。ドンドン現場の第一線で活躍してもらったら良いのです。そして成果に見合った報酬を差し上げれば良いのです。転職をいつも考えている若手よりも、「継続雇用してもらって有難い」と会社へのロイヤルティが高い高齢者に活躍してもらった方が良いと考えてみましょう。