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逆転人生、大阪市西成高校の反貧困学習

 NHK総合TVの月曜日夜10時台に[逆転人生]という番組があります。人生上がったり下がったりですね。この番組は実話に基づいています。当事者の人生が奈落の底へまっしぐらだったのが、ある契機に逆転し最後はハッピーとなる構成で番組は進んで行きます。昨日(令和3年1月25日)は、大阪市西成区の西成高校が舞台でした。

 番組は在校生数名が校舎の外でタバコを吸っているところから始まります。そこへ新任の教頭として赴任した当事者が「何をしている」と咎めるのですが、生徒たちは無視して立ち去ります。教頭は「どうすればこの高校の風土を変えられるのか」と悩みます。暫くして新任の校長先生と数名の先生、そして教頭先生を加えて改善プロジェクトが立ち上がります。「学校の先生がここまでするのか」という位に真剣に対策を考え、そして不登校になっている生徒の自宅へ飛び込んでいくのです。

 そこで見た風景は・・・。ネグレクトという言葉を最近よく聞くようになりましたが、親が子育てを放棄してしまっていたのです。生徒の自宅の自宅には両親がいません。「お母さんは?」と先生。生徒は「出て行った」と一言。家庭環境がすさんでいるために、生徒たちは学業に勤しもうという気力がわかないのでした。

 このような現実を見た先生たちは、「どうすれば生徒に学業を続けることに気を引いてくれるか」と考え出します。プロジェクトメンバーの一人が「反貧困学習」という文字を黒板に書きます。「貧困の再生産をしてしまってはいけない。貧困から脱出できる方法を教えていきましょう」と先生たちは決意を新たにします。

 場面が変って教室が映し出されます。それまでは先生の話を全く聞いていなかった生徒が、目をギラギラさせて先生の方を見つめているのです。反貧困学習が開始されたのです。貧困から脱出するには自分達で法律や社会の制度を知るべきだと先生は訴えます。ある2年生の女子生徒は歯科医院でアルバイトをしていたのですが、熱を出して仕事に行けなかったことを理由にクビされた事実を取り上げていきます。先生たちに労働基準法があることを学び、女子生徒は労働基準監督署に事情を話しました。当然に監督官の返答は「予告手当がもらえます」でした。

 女子生徒は内容証明郵便を出し、見事解雇予告手当を奪取したのです。また育児放棄された男子生徒の為に教頭先生自らが保証人として印鑑をし生活保護の受給も決まります。皆が進んで学習していきます。その学習の中には「反貧困学習」も組み込まれていきます。

 99名の就職希望者がいました。先生たちは手分けして地域の中小企業等を回り、就職先を探していきます。そして運命の就職内定日がやってきました。99名全員の就職が内定しました! 生徒と先生が手を取り合って大喜びのシーン。胸が熱くなります。この就職率100%達成はこのドラマの時から今に至るまで10年間続いているそうです。反貧困学習がしっかりと西成高校に根付いた証なのです。

 私たちは直ぐに諦めていませんか。西成高校の生徒さんと同じく、将来への目標をしっかりと書き止め、それを実現させようという努力をしているのでしょうか。「やればできる」のです。「出来ないのはやろうとしていない」からです。これを書きながら江戸時代米沢藩の中興の祖、上杉鷹山の言葉で同じようなものがありました。思い出しました。さあ、やりましょう。そして動きましょう。