今朝の大分合同新聞に、大分県警察の人事考課制度に「部下が上司を評価する」360度評価が導入されたという記事が掲載されていました。「ほう、お堅いイメージの警察でも部下が上司の働きぶり等を評価する時代になったのか」と興味深く、記事を読みました。
経営者が悩むのは、社員の働き方をどのように評価をし、給与や役職等適正な処遇を与えれば良いのかという問題です。企業は社長1人では事業運営ができません。よって社員を雇用し、働き方の指針を与えて会社業績の向上に貢献してもらわないといけません。ある社員は棚ぼた的に高い業績を上げ、また別の社員は創意工夫すれども営業成績が上がらないということもあるでしょう。この場合、社長はどのような意思決定をされるでしょうか。
最低でも賞与の支給額に差をつけることはあるでしょう。しかし一歩進んで、基本給引上げ等の恒常的な効果をうむ月例賃金水準の引上げには躊躇するかも知れません。高い業績を上げた社員が次年度以降も確実に業績を上げ続けていけるか不確かだからです。このように人事考課に悩みは尽きないものです。
会社という営利組織が日本に出来て150年余になります。丁稚等を雇用していた江戸時代までならいざしらず、明治以降の会社組織では最低賃金制の有無と別に、個々の社員にどの位の報酬を出すのか経営者達は悩んできたと思います。この悩みは現在の経営者まで引き継がれています。いや、現代の経営者の方が悩みが深いかも知れません。
何故なら、①社員が声高に自分達の給与や働き方について意見を主張始めたからです。これはある意味では経営に緊張感を与えるという面で正しい方向だと思います。しかし逆に、「期待したとおりに働きもせず、成果も出さず、しかし権利だけは主張する」ようになれば会社は混乱してきます。このような事態は経営者としては是非とも避けたいところです。
②更に、労働法令や裁判において、同一労働同一賃金への要求度が相当な勢いで経営者へ押し寄せていることがあります。日本は法治国家ですから、会社や経営者も法令や裁判で示された賃金支払いに対する新たな流れを無視するわけにはいきません。経営者としては正しいと信じて人事考課をし、個々の社員へ賃金や賞与を支給していると考えても、ある社員から「正当な評価ではないし、賃金に格差があるのはおかしい」と訴えられるかもしれません。
このように、人事考課とそれに基づく賃金支給には悩ましい問題を抱えており、今後も尽きることはないでしょう。最近ではジョブ型雇用が主張され始め、従来型のメンバーシップ型雇用が肩身の狭い思いをしています。コロナ禍でリモート勤務、それも「働く」と「バケーション」とを組み合わせたワーケーションなる造語も作られなど、新常態での勤務が話題となっています。このような時、誰がどのような形で働きぶりや成果物の評価をしていくのでしょうか。経営者のほか、経営幹部たる上司も暗中模索の状態だと思います。
人事考課のやり方は会社で異なって良いと思います。もし、人事考課制度を変更しようとお考えの経営者は清成事務所へお問合せ下さい。一緒に新事態にあった、そして会社と社員、取引先の三方良しとなる人事考課制度等を組み立てていきたいと思います。