既にご存知の方もいるかと思いますが、今年10月から改訂される大分県最低賃金が1時間当り792円と決まりました。昨年度の引上げ額は28円でしたが、今年は2円と極めて低額な引上げ額となりました。全国的には、東京都等で引上げ額が0円という地域もあります。今年の最低賃金額が790円で揃っていた各県も、1円、2円、3円の何れかという様に引上げ額にバラツキが生じています。
この事実から読み取れることは、新型コロナウイルス感染症の影響が計り知れない現状では、安易な最低賃金額引上げは青息吐息の企業に回復不能な深刻なダメージを与えるという懸念を最低審議会が持ったと考えられます。安倍政権が誕生して6年余り。安倍政権は毎年最低賃金を大きく引き上げてきました。給与水準の引上げで需要・消費を喚起し、経済拡大に拍車を掛けかかったのです。最終的には全国平均で1000円を目論んでいたに違いありません。その時点での大分県の最低賃金は、900円近くになるのではないかと私は予想していました。
最低賃金審議会において、労働者側委員は低位な引上げ額に対し抵抗したに違いありません。しかし公益委員が説得したと思われます。使用者側委員は当然の如く、据置を主張したことでしょう。日本のみならず、全世界でのコロナ感染症の状況を精査するまでもなく、1930年代の世界大恐慌と同程度以上に、強烈な経済停滞に世界各国は見舞われています。このような環境下では、労働者側社員も引上げの徹底抗戦はできないと考えたに違いありません。ここは大人としての対応であったと思います。
とは言え、大分県では最低賃金が2円アップすることは確定です。自社の経営はとても苦しいことは分りながらも、法令等遵守の立場から2円の引上げを行わざるを得ません。従業員の時間当り賃金が法定の最低賃金額と同じという例は、アルバイト等の一部を除き少ないと考えられます。よって、実際には人件費増加という実害はないかも知れません。
今年の最低賃金額の引上げ額はコロナ感染症という脅威から、一時的に低く抑えられたと考えるべきです。コロナ感染症の脅威と影響は数年続くと予想されています。よって、ある程度の落ち着きが見られれば、再び最低賃金の上昇圧力が高まっていくことでしょう。その時において慌てることのないよう、労働生産性向上の取組みは今後も確実に実践していく必要があると思います。