1月から3月までのGDPが内閣府より発表されました。前期(令和元年10月~12月)に引き続きマイナス成長となり、年率換算だと△3.4%となります。GDPは四半期(三ヶ月単位)ごとに集計されています。よって後3回の四半期でプラスに転じれば、年間ベースではプラス成長となる可能性もあります。しかし、民間シンクタンクの予想は極めて悲観的です。令和2年4月~6月の四半期は、新型コロナウイルスの影響による外出自粛規制の落込みで年率△20%超となるだろうとしています。年間ベースでのプラス成長は政府の財政支出をカンフル剤として利用しても達成不可能と言わざるを得ません。
「GDPがプラス成長でなくてもマイナスでも良いのではないか」という議論もあります。GDPの成果物として所得が得られます。この所得は大きく分けて、「個人の所得(給与等)」「企業の所得(純利益等)」「政府の所得(税収等)」の3つに大別されます。「政府の所得(税収等)」の相当部分は社会保障費に充当されています(今年の社会保障費は36兆円弱)。社会保障は「子育て支援」「医療費」「介護費用」「年金支給」「学費援助」等々で構成されています。日本国民は中程度の財政負担で中程度以上の福祉(便益)を受けています。GDPがマイナス成長となると、個人・企業・政府夫々に入ってくる所得が減少します。税収減が続けば「政府が使えるお金が少なくなる」ということに直結しますので、私達が政府に期待している福祉制度そのものが成り立たなくなります。
単純に考えてみます。企業の利益の一部が税収となるのですが、企業の売上ダウンが税収にどのような影響を与えるかを診てみましょう。ある企業の売上高が1000だとします。1000には費用と利益とが含まれています。費用が700で利益が300とすると売上高1000となります(費用+利益=売上高)。民間のシンクタンクの予想どおり、GDPが20%ダウンすると売上高は800となります。費用には売上との連動性が高い変動費があります。よって経営者は費用を700から650と50引き下げることができるかも知れません。とすると利益は800から650を差し引いた150となります。この150の利益から政府に収める税金が控除され、残りが企業の取り分である純利益となるのです。
以上から分かることは、売上高の減少率(△20%)より利益の減少率(△50%(150÷300))が大きくなるのが一般的だということです。よって、日本国民が現状と同等以上の社会福祉・厚生を受けたいのであれば、日本経済の安定的な成長が必須条件であることが分かるのです。