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ソニー、入社初年度で年収が最大で200万円の格差

 ソニーが新しい給与制度を始めたようです。新入社員でも初年度から最大で200万円近い年収格差が発生するというのです。日本の給与体系は、悪い表現を使えば平等主義です。日本の企業では「新入社員が使えるか(戦力となるか)どうかは分からない」という懸念もあることから、給与格差は入社3年程度を経てから少しずつ始まるといのが一般的です。

 これはある意味では理にかなっています。日本の企業では「人に仕事をつける」というのが原則です。よって、社員には色々な仕事を経験させ、ゼネラリストとして育成していくのが人事制度の根幹となっています。一方で欧米等諸外国では、「仕事に人をつける」のが原則です。「この仕事を適正に行う人財を社内外に求める」のです。もし「その仕事は事業再編成で消滅する」という事態になれば、その仕事をしていた社員は当然に解雇(離職)されるのです。極めてドライな人事制度です。日本は前述のとおり「人に仕事をつけている」のです。仮にその仕事がなくなったとしても、配置転換等で雇用を維持することが企業に求められます。日本では解雇は厳しく制限されています。

 ソニーは入社時点から70のコースの中から1つを選択させるように変更しました。「人に仕事をつける」から「仕事に人をつける」へと軸足を移動したのです。途中でのコース変更もあると思いますが、選択したコースでスペシャリストとしてその能力を発揮してもらうのです。ソニー他日本の大企業は中韓含む諸外国の企業と熾烈な戦いを日々繰り広げています。特にIT系の超優秀な人財を国内外から採用しようとすれば、旧来の横並びの給与制度では「ソニーは就職先の選択肢には入らない」と判断したのでしょう。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングでも、入社2~3年後には基幹店の店長以上になれる人財を年収2千万円で採用するという情報を目にしたことがあります。業種・業界の別を問わず、日本の大企業では給与体系の大変革が始まっているようです。「大企業と自社は違う」という主張も納得できます。しかし、これからの企業活動では生産性向上が大きな鍵を握ってきます。(超)優秀な人財確保、IT化の推進、有形固定資産の継続的な投資等々生産性向上の歩みを止めてはいけません。その一環として、人事制度や給与体系の継続的な見直しがあるのではないかと思います。