昭和から平成の初めまで、幾つかの日本的労使慣行が”強い日本の製造業”の代名詞となっていた時期があります。①終身雇用、②年功序列賃金、③企業内労働組合の3本が代表的です。最近はその1つである”①終身雇用”が音を立てて崩れてきています。
「寄らば大樹の陰」ではありませんが、「この会社に入社したのだから定年まで勤めあげる」というのが終身雇用制度の良き一例でした。最近は労働市場が売り手市場であることもあり、入社した後にすぐ退社し他社へ移ることも日常茶飯事となりました。30歳代から50歳前半までの人材も転職を恐れず、続々と会社を辞めています。少し前までは「転職しても賃金は下がる」ことが大半でした。しかし最近では「転職して賃金が上がった」という事例も増えてきています。特にIT技術者は元々の総人財数が少ないこともあり、転職で賃金が上がることがごく普通となっているようです。
会社経営者はたまったものではありません。仮に転職して中途入社しても、「ここは自分の居所ではない」と決めつけて、短期間で退社(再離職)するのであれば、優秀な人財確保どころか労働力の量的確保もままなりません。それでは入社した社員がそのまま在職し、実力を発揮して会社業績を向上してもらう為の秘策はないのでしょうか?
高い賃金で人を集めてはいけません。経済的報酬は会社に対する帰属意識向上の寄与度は決して高くありません。「自分達の仕事は社会にどのように役立っているか(貢献しているのか)」と熟考させて下さい。「人の役に立ちたい」というのは人の根源的な欲求と言っても良いでしょう。会社の経営理念、社是等にはこの「社会の役に立つ」という精神が文章化されています。この経営理念や社是を徹底的に叩き込んで下さい。社員のみならず経営者も経営理念や社是を仕事の中で実現させて下さい。
経営理念や社是を経営者や全社員の精神的な拠り所として下さい。「念仏をとなえる」の如く、自然体で経営理念や社是をごく普通の行動基準まで落とし込んで下さい。そうすると経営理念や社是が求心力となって、社員が会社から離れる(退職する)ことを防止してくれるように働いてくれます。