昨日(10月21日)の日本経済新聞に注目すべき記事が掲載されていました。既に一部が改正・施行されている民法において、2020年(令和2年)4月1日以降に施行される債権の消滅時効に関する記事です。
現行法では消滅時効の基本は10年としながらも、債券の発生原因別に最長5年の短期消滅時効を設定されています。例えば、飲食店の飲食に関する債権は1年、商品の売買代金請求権は2年、工事請負代金債権は3年という具合です。民法は一般法です。民法制定時に余りにも細かく設定しすぎました。また民法制定時(明治31年、1899年)と比較して高度な経済社会となった現在では、民法制定時に予想していなかった複雑な法律行為が発生しています。
これを受けて民法の大規模改正が行われたのです。主要な改正目的の1つに短期消滅時効の統一があります。改正法では業種別に設けられていた年数が5年に統一されました。ここで問題となるのが、賃金未払いに係る消滅時効です。現行民法では雇用に係る賃金の消滅時効は1年です。これでは短すぎるということで、特別法である労働基準法において2年に延長しています。労働者保護の観点から2年へ延長したのです。
ところで、来年(2020年・令和2年)4月に施行される改正民法では短期消滅時効が5年とされたため、特別法(労働基準法)で規定されている2年の取扱いが注目されてきました。経営者側は最近の働き方改革に伴う法令改正等に基づく負担が大きいとして現行とおり2年を主張していました。その一方で労働者側は5年を主張。両者の接点が見つからないまま、改正民法施行までにあと半年余りとなってしまいました。
冒頭の日本経済新聞では「厚生労働省は賃金債権の消滅時効を3年とする方針を固めた」と報道していました。日本人の良さである対立する両者の主張を上手く取り上げて折衷案を出したというところでしょうか。法律として国会で成立しないと最終決着はつきません。それでも一応の目安は尽きました。
社員が退職した後に未払い賃金(時間外労働賃金含む)の請求が届くことがあります。そのような事態になれば、一時的に大きな金額が社外流出することにもなりかねません。就労時間管理、特に時間外労働の監視には心して取り組む必要があります。